ArmがIoT事業を手放す、移管先はソフトバンクグループ:製造マネジメントニュース
Armは2020年7月7日、ISG(IoT Service Group)で展開してきたIoTプラットフォーム「Pelion」とトレジャーデータの2つの事業について、Armの親会社であるソフトバンクグループと関連会社が所有および運営する新しい事業体の傘下に移管する提案を行ったと発表した。
Armは2020年7月7日(現地時間)、ISG(IoT Service Group)で展開してきたIoTプラットフォーム「Pelion」とトレジャーデータの2つの事業について、Armの親会社であるソフトバンクグループと関連会社が所有および運営する新しい事業体の傘下に移管する提案を行ったと発表した。この戦略的組織変更により、主力の半導体IP事業を強化し成長力と収益性を高めたい考え。事業移管は、取締役会の承認などを経て、2020年9月末までに完了する予定である。
現在のArmは、持ち株会社であるソフトバンクグループの中で「アーム事業」として位置付けられている。Armの傘下にあるISGの2つの事業は、事業移管が完了すればソフトバンクグループの新しい事業体となるためアーム事業と肩を並べることになる。なお、事業移管完了後も、Armの半導体IP事業とISGの2つの事業は連携を継続する方針だ。
Arm CEOのサイモン・シガース(Simon Segars)氏は「成長段階の事業の育成に関するソフトバンクグループの経験により、ISGの2つの事業はデータの機会を捉える価値を最大化できるだろう」と語る。
また、トレジャーデータ事業を所管するArm データビジネス バイスプレジデント兼ジェネラルマネジャーの芳川裕誠氏は「事業主体の移転により、トレジャーデータのサービスやサポートに影響を与えることはない。引き続き顧客およびパートナー企業に対し、何一つ変わらぬ形でカスタマーデータプラットフォームを提供する。われわれのネクストステップにおいて、さらなるカスタマーデータプラットフォームの進化と、蓄積されたデータを通じた最高の顧客体験を提供できるようにすることを約束する」と述べている。
2014年に立ち上げたISGの成長をソフトバンクグループに委ねる
Armは2014年からISGを立ち上げ、クラウド開発環境の「Mbed」、IoTデバイス向けのOS「Mbed OS」、IoTデバイスの管理に用いるクラウドプラットフォーム「Mbed Cloud」などの展開を広げた。2018年8月にはトレジャーデータを買収するとともに、同社のカスタマーデータプラットフォームとMbed Cloudなどを組み合わせたPelionを発表し、IoTプラットフォームとしての事業拡大を進める姿勢を見せていた。
しかしトレジャーデータの買収から2年で、Arm自身によるISGの成長を諦め、親会社のソフトバンクグループに今後のかじ取りを委ねることとなった。2つの事業のうちトレジャーデータ事業がデジタルマーケティング市場で高い評価を得ていることを考えれば、今後はPelion事業をどこまで伸ばせるが焦点になる。
一方、ISGを手放して再び半導体IPの一本足打法に戻るArmとしては、既に高シェアを獲得しているモバイル機器向けプロセッサや32ビットマイコンだけにとどまらず、「Macintosh」への採用が決まったクライアントPC向けやサーバ向け、AIアクセラレータ、GPUなどの事業展開も強化する必要がある。Armの強固なポジションを脅かしつつあるオープンソースのプロセッサIP「RISC-V」に対抗するためにも、従来とは異なる柔軟なライセンス形態の浸透も不可欠だ。
なお、ArmでISGのプレジデントを務めてきたディペッシュ・パテル(Dipesh Patel)氏は、2020年7月にArmのCTOに就任している。
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