Armの“囲い込まない”IoTプラットフォームがその先に見据えるもの:IoT観測所(48)(2/3 ページ)
このところ、IoTプラットフォームに関するArmの巻き返しがちょっとすごいことになっている。2018年2月下旬から矢継ぎ早に展開を急拡大しているのだ。
これまでのArmの買収方針と何が違うのか
トレジャーデータの買収に関しては、こちらに詳細記事が出ているので繰り返しは避けるが※2)、図2にあるように、トレジャーデータの「CDP(Customer Data Platform)」と「DDP(Device Data Platform」はデータ管理に属する部分で、これまでMbed Cloudの中では欠けていた部分である。
※2)関連記事:トレジャーデータを得たArm、「ペリオンプラットフォーム」をIoTのゆりかごに
ここは言ってみれば、いわゆるパブリッククラウドが通常提供するものの上層にあたる部分だが、アマゾン(Amazon)の「AWS IoT」やマイクロソフト(Microsoft)の「Azure IoT」ではさまざまなサービスが用意されている。これは、両社のみならず、その他のベンダーが提供するものも含まれており、こうしたものの数や質でArmは競合に大きく見劣りしていた。トレジャーデータのソリューションは、それ単体で劣勢を大きく覆せるという規模ではないが、これが加わることでMbed Cloud普及の励みになるのは間違いない。
さて、問題は既にトレジャーデータはこれまでMbed Cloud以外のプラットフォームを利用して、多数の顧客にCDP/DDPソリューションを提供していることだ。これをMbed Cloudにむりやり移行させる……といった予定は全くなく、引き続きMbed Cloud以外のプラットフォームをサポートするとのことだ。
実際、2018年8月23日に国内メディア向けに行われた会見の際に※3)、ArmのIoTサービスグループ プレジデントのディペッシュ・パテル(Dipesh Patel)氏に「トレジャーデータのプラットフォームは引き続きMbed Cloud以外をサポートしてゆくのか?」と確認したところ、「Pelion IoT Platformの3つの要素(トレジャーデータ/Mbed OS+Mbed Cloud/ストリーム)は、それぞれ独立して提供することができる。もちろん一緒に提供することも可能だが」という回答であった。要するに、買収したからといって自社のプラットフォームに囲い込みをしないという方針が明確に示されたことになる。
※3)関連記事:Armの「世界初」のIoTプラットフォームは何ができるのか
こうした方針は、従来のArm自身の買収から見てもちょっと方向性が異なっているように思われる。実のところ、Armが現在提供しているさまざまなIPのうち社開発したものは、極端なことを言えばプロセッサIPのみで、フィジカルIPの「Artisan」もGPU/VPUの「Mali」も、全部買収によって獲得したものだ。あるいは、Mbed OSそのものも最初はSensinode Oyが開発していたものだった※4)。従来はこれらがArmの傘下に入り、Armブランドで、Armのプラットフォームにのみ提供される形態になっているわけだが、どうもクラウドサービス関連に関して言えば、こうした方式でうまくいかないと判断した節が見受けられる。
※4)関連記事:ARM「mbed OS」とは何か?その詳細と動向
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