Armの「世界初」のIoTプラットフォームは何ができるのか:製造業IoT(1/2 ページ)
Armの日本法人アームは2018年8月22日、東京都内で会見を開き、トレジャーデータの買収に合わせて発表した新たなIoTプラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform」について説明した。同日からパートナーなどを通して国内提供を始めている。
Armは2018年8月22日、東京都内で会見を開き、トレジャーデータ(Treasure Data)の買収に合わせて発表した新たなIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform(以下、ペリオンIoTプラットフォーム)」について説明した。同日からパートナーなどを通して国内提供を始めている。
会見には、Arm IoTサービスグループ プレジデントのディペッシュ・パテル(Dipesh Patel)氏と、トレジャーデータ創業者でArm IoTサービスグループ データビジネス担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーに就任した芳川裕誠氏が登壇。またゲストスピーカーとして、Armの親会社であるソフトバンクグループ 取締役でソフトバンク 社長兼CEOの宮内謙氏や、トレジャーデータのユーザー企業であるジョンソン・エンド・ジョンソンやSUBARU、ソニーマーケティングの担当者も登壇し、トレジャーデータを買収したArmに対する今後への期待を述べた。
ペリオンIoTプラットフォームは、ArmのIoTサービスグループが展開してきた「Mbed Cloud」によるデバイス管理機能に加えて、2018年6月に買収したStream TechnologiesのIoT接続管理技術に基づくコネクティビティ管理機能、そしてデジタルマーケティング分野を中心に300社以上に採用されているトレジャーデータの「Customer Data Platform(CDP)」を中核とするデータ管理機能から構成されている。パテル氏は「さまざまなデバイス、さまざまなクラウドを使ってエンドツーエンドでデータを扱える世界初のIoTプラットフォームだ」と強調する。なお、ペリオンはギリシャの山の名前で「大きいというニュアンスがあり、言葉の響きも良いので採用した」(同氏)という。
2016年に発足したArmのIoTサービスグループは、顧客とともに活動する中でIoTの取り扱いについて知見を積み重ねてきた。「顧客がIoTに感じている課題は多数ある。例えば複雑性だ。デバイスの種類はセンサーからエッジゲートウェイまでさまざまに細分化されており、通信のつなぎ方もBluetooth、Wi-Fi、セルラー、LoRaなどいろいろある。データの向かう先も、オンプレミスもクラウドもあれば、そのハイブリッドもあり得る。さらにはセキュリティも必須だ」(パテル氏)。
ペリオンIoTプラットフォームはこれらの課題を解決しつつ、グローバル展開を容易にできることを主眼に置いて開発された。パテル氏は「世界中のどんな環境でも、ウェークアップ後プロビジョニングなしでIoTを使えるようにする。IoTはスマートフォンと同じように使えるようになる」と説明する。
また、IoTから生成されたデータについて、管理可能な使えるIoTデータにしていく複雑なプロセスを、トレジャーデータのCDPに任せることができる。「顧客は、さまざまなデバイスからのさまざまなデータを1つの画面で一括して管理したいと考えているが、それが可能になる」(パテル氏)という。
アマゾンの「AWS」、マイクロソフトの「Azure」、グーグルの「GCP」といった大手クラウドベンダーは、デバイスに近いエッジ側のサービスを充実させる戦略を強化している。AWSはリアルタイムOSの「Amazon FreeRTOS」、Azureはセキュリティソリューションの「Azure Sphere」、GCPはAIチップの「Edge TPU」などだ。Armが推進するペリオンIoTプラットフォームと競合することも多くなる。
パテル氏は、これらの大手クラウドベンダーとの競合について「それらのサービスは一部しかカバーしていないが、ペリオンIoTプラットフォームは、どのようなデバイス、どのようなクラウドともつなげることができる。何より、IoTという空間は巨大で1社だけではカバーすることはできない。Armは、それらのクラウドベンダーのパートナーとしても、さまざまな顧客の要求に応えていく必要がある」という見解を示した。
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