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令和時代の設計者にささげる、設計者CAE“8つ”のポイント構造解析、はじめの一歩(10)(1/3 ページ)

「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。最終回となる第10回は、連載の【総まとめ】として、設計者CAEを実践する上で押さえておきたい8つのポイントを紹介する。

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はじめに

※注意※

  • ヤング率、ポアソン比など、基本的な材料力学の知識があることを前提としています。材料力学の知識を持たずして解析を行うことは、免許を持たずしてクルマの運転をするのと同じことです。「危険」であることを心得ておいてください
  • ソフトウェアのインストールや使用については、自己責任ということでお願いします
  • 今回の記事は、連載第5回の「線形静解析」で説明した部分が大幅に省略されています。ぜひそちら(連載第5回)の記事に目を通してからご覧ください

 「構造解析」をテーマに進めてきた本連載ですが、これから構造解析を実践していくために必要な“小さな、はじめの一歩”の役割を十分に果たせたのではないかと感じています。

 最終回となる今回は、これまでの連載のポイントを「設計者CAE 8つのポイント・改」としてまとめたいと思います。

 筆者は、これまで講演や雑誌の記事の中で「設計者CAE 8つのポイント」と題し、構造解析の初心者に向けての注意点を何度も説明してきたわけですが、設計者やCAEを取り巻く環境は日々変化しています。そこで、これまでお伝えしてきた“8つのポイント”を、令和時代のものに改訂してみようと考えたわけです。ぜひ、これまでの連載を振り返りながら、「設計者CAE 8つのポイント・改」を読んでみてください。

ポイント1:材料定数はキッチリ把握しておく

 材料定数の大切さは十分理解していただけたでしょうか。材料定数は、解析をつかさどる数値群です。それら数値群は、解析に必要な入力系と結果の評価に必要な出力系に分かれます。

 解析するに当たって材料定数を調べるわけですが、ヤング率ポアソン比降伏応力の他に、密度線膨張係数疲労限度も併せて調べておきましょう。解析のバリエーションが広がります(図1)。

材料定数の役割
図1 材料定数の役割 [クリックで拡大]

 一般的によく使われる材料であれば、インターネットを通じて、その情報を入手することが可能です。例えば、日本材料学会のリンク集などがあります。

 特に有名なのがMatWebです。著名なCAD/CAEベンダーの製品に組み込まれている材料定数は、このMatWebのデータを引用していることが多いです。

 また、「アルミ」と一言でいってもいろいろな種類があります。一番の方法は、材料を調達しているメーカーに聞いてみることです。

 構造物が破壊する場合、「8割が、応力集中部が何らかの疲労によって壊れる」という統計データがあります。振動を受ける場合、それは疲労に直結します。疲労限度は入手しにくいデータではありますが、調べておくことをオススメします。

ポイント2:キレイな3Dモデルをキレイに作る

 キレイな3Dモデルは、設計者CAEの肝です。3Dモデルがポンコツだと自動メッシュ分割ができません。キレイな3Dモデルを作るコツは、本連載でも紹介しました。少しおさらいすると、3Dモデルの作成途中で自動メッシュ分割を行って、メッシュ分割に対するモデルの“タフネスさ”を確認しながらモデリングを進めるのがポイントです。

 最近の3D CADには、フィーチャーをまとめてグルーピングし、その抑制を制御したものをコンフィギュレーションとして登録できるものがあります。例えば、フィレットのあるモデル/ないモデルを“同一のモデル”として管理できます。この機能があれば、設計用の詳細なモデルと解析用のモデルを同一モデルとして管理できます。

 近年、設計用の3Dモデルは、PDMで厳格に管理されるようになってきていますが、解析に関するデータの場合、「3Dモデル」「解析の設定」「結果」が適切に管理されていないことが少なくありません。

 今後、AI(人工知能)や機械学習、設計性能のトレーサビリティーなど、3Dモデルや解析結果が利用される可能性が高まります。キレイな3Dモデルを作ることに加えて、3Dモデルや解析の設定、結果をキレイに管理する方法を模索しておきましょう。

ポイント3:荷重は、面積/分布/方向を考慮する

 3D CADで作成したモデルは、基本的に「設計のためのモデル」です。荷重のために面積が必要となると、そのためのサーフェスがなくてはなりません。せっかく出来上がった製品モデルに、サーフェスのための切り込みを細工するのは気が引けることでしょう。そのためにも、設計モデルと解析モデルを別々に管理しておく必要があるのです。

 本来、荷重の分布面をサーフェスで作成し、それに従って荷重をかけることはプログラム的に難しいことではありません。30年前の製品でも既に実装されている機能です。ところが、最近の製品を見てみると、ほとんどがこの機能を実装していません。

 そこで、荷重をできるだけ正確に設定するための方法を紹介します。名付けて「荷重ボリューム法」です。荷重の面積と分布をカタチとして、それ自体の重力加速度を荷重として解析し、その反力を荷重とする方法です。反力はチカラですから荷重となります。回りくどい方法ではありますが、荷重の面積、分布、方向をなるべく正確に考慮するためには必要なことです(図2)。

荷重ボリューム法で正確な荷重を表現
図2 荷重ボリューム法で正確な荷重を表現 [クリックで拡大]

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