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欧米発CAEはとにかく高い! ――設計者CAEのあるべき姿とライセンス費用の問題日本機械学会 設計工学・システム部門の講習会より(2/2 ページ)

設計者自身によるCAEの浸透・発展を阻んでいるのは、CAEソフトの煩雑になりがちなオペレーション(使い勝手の問題)や、ライセンス費や教育費など「CAEの運用コスト」。――日本機械学会 設計工学・システム部門による講習会で、企業や教育現場におけるCAE導入の課題提示や、ライセンス費の問題提起が行われた。

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設計者CAEのポイント

 栗崎氏は「設計者CAEの8つのポイント」として以下を挙げた(関連記事:「CAEを使いこなすポイントと、レーシングカー設計のCFD」)。

  1. 線形静解析の意味と範囲を理解すること
  2. 4面体要素は2次を使う
  3. ミーゼス応力で大きさを、主応力で方向を見る
  4. まずは変形量をチェックする(応力は変形から生まれる)
  5. 降伏応力が分からないと強度判定はできない
  6. 解析は収束を見る(メッシュサイズによる精度変化を考慮する)
  7. 構造/荷重/拘束は一対と考える
  8. 応力図を信じるな

 また設計者がすべき解析というのは、「所定の荷重に対する変位やひずみ、応力を知ることではなく、所定の荷重に対して望ましい変位、ひずみ、応力になるように構造(質量および剛性)を決めること」とした。

 栗崎氏は、設計が終わってからではなく、設計が進行している最中に決断が必要となる要所ごとでCAEを活用する「In Process CAE」という考えを提唱している(関連記事:「FEMの知識総まとめ〜あなたの解析は設計後?〜 」

 設計者がCAEを実務で活用するためには、まず材料力学や有限要素法など座学の知識が実務に落とし込めていなければならない。栗崎氏は以前から、設計者の座学(材料力学や有限要素法)習得率の低さについて問題視してきた。

 現在はキャドラボの親会社である図研のPreSight事業部の活動の一環となっている設計者CAE講座「解析工房」や、無償CAEを使いながら有限要素法による構造解析を学ぶ「¥0(0円)から始める設計者CAE」など、実践的な座学習得を重視した設計者のCAE教育プログラムを実施してきた。

コストが悩ましい教育現場のCAE

 東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻 准教授 泉聡志氏は、「東京大学におけるCAE教育とCAE演習問題作成WGの活動紹介」と題した講演で、教育現場が抱えているCAEにまつわる問題について話した。


東京大学大学院工学系研究科 機械工学専攻 准教授 泉聡志氏

 東京大学では、材料力学や有限要素法などの座学に加え、引っ張り試験や曲げ試験などの材料実験の実習を伝統的に実施してきた。それと併せて、3次元CADやCAEを取り入れた教育も行ってきた。

 実践的な有限要素法の演習問題を教育向け有限要素法ソフト「Easy-σ Lite」で解くという実習も行っている。5000接点を上限としたシェアウェア(とはいっても840円)だが、教育機関には無償で提供されている。こちらは、有限要素法のテキスト(書籍)を理解するための取り組みであるという。

 東京大学では学生の人数が多く、計算機やソフトの調達や演習プログラム開発など、予算や人員的に厳しいという。またCAEと従来の力学教育との間のギャップが大きく、設計の高度化に教育が追い付いていない状況ということだ。

 東京大学でも商用のCAEソフトのアカデミック版を活用している。泉氏は商用ソフトは高度化してきているものの、操作習得に時間がかかり過ぎるなど、教育の現場での適用には課題もあると指摘。

 また商用のCAEソフトは、たとえアカデミック版であっても、予算が厳しい教育の現場にとっては価格が高い。ただその中にも、報告書を提出すれば2年間無料で使えるライセンス(サポートはなし)や、授業では使用できないが学生個人が利用できる無料パッケージなど、条件付きでコストがセーブできるツールがあり、そちらも合わせて活用するようにしているということだ。

 また泉氏の研究室では、産学連携で社会人のCAE設計教育にも取り組んでいる。日本機械学会(材料力学部門)の活動として、「マルチフィジックス研究会」を立ち上げ、高度化した設計開発や、分業化したCAE業務の中、CAE教育はどうあるべきか議論しているという。設計技術者がCAEを設計にうまく生かすためのスキルと教育に焦点を当て、講習会開催や演習問題の無償配布など行っている。

 解析専任者と設計者の分業化について泉氏は、「コミュニケーションの問題が深刻」だと述べた。解析専任者は、設計者にどう貢献したらよいか分からず、設計者は解析専任者にどう解析を依頼したらよいか分からない、といった具合であり、さらに設計者と解析専任者の間には、解析オペレーター(非専門家)が入ることもある。そうして解析専任者と設計者の間の溝は深まっていってしまう。

 解析専任者向けには、CAE懇話会や非線形CAE勉強会などのコミュニティーもあり、ベンダー主催の講習の数も豊富だ。一方、設計者は、CAEについて勉強しようにも、解析専任者たちのコミュニティーには入っていけない。設計者はCAEをOJTで習得させられることが多く、設計者向けのCAEセミナーの数も、解析専任者向けと比べれば多くない。

 泉氏は、「CAE=シミュレーション」でもなく、「CAE=計算力学」でもなく、「CAE=計算機使った設計(力学+シミュレーション+設計生産)」であるとし、解析専任者と設計者のCAE教育を明確に区別すべきと述べた。

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