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楽器の練習で認知機能が向上し、脳活動に変化があることが明らかに:医療技術ニュース
京都大学は、高齢者が新たに楽器の練習に取り組むことで、認知機能が向上し、脳活動に変化が見られることを確認した。健康な高齢者が4カ月間鍵盤ハーモニカのレッスンを受けたところ、言語記憶が向上していることが示唆された。
京都大学は2020年12月24日、高齢者が新たに楽器の練習に取り組むことで、認知機能が向上し、脳活動に変化が見られることを確認したと発表した。同大学大学院総合生存学館 教授の積山薫氏らの研究グループが明らかにした。
研究では、楽器を習ったことがない平均年齢73歳の健常高齢者66人を、鍵盤ハーモニカのグループレッスンを受ける群と受けない群に分け、4カ月後にどのような違いがあるかを調べた。
その結果、鍵盤ハーモニカの訓練を受けた群は、楽器の演奏に直接関係しない言語記憶が向上していることが示唆された。また、簡単な課題をしている時の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により測定したところ、より少ない脳活動で同じ成績を出せるようになっており、神経処理の効率化が生じていることが分かった。
さらに、脳の左被殻を起点とした解析では、左被殻と右上側頭回の活動同期性が減少した人ほど、言語記憶が向上していることが示された。これは、神経処理の効率化が認知機能向上の神経基盤であることが示唆される。
楽器の練習が加齢による脳の衰えを抑制するという考えは、一般的に広まっているものの、学術的な裏付けはほとんどされていない。研究チームは、今回の結果はグループレッスンによるため、認知訓練の他に社会的交流の影響も無視できないが、集団による楽器演奏の有効性は確認できたとしている。
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