開発と連携し“人にやさしい”生産現場を実現、多品種少量生産方式「D-PICS」:スマート工場最前線(3/3 ページ)
多品種少量生産に適した生産方式として有名なセル生産方式。多数のメリットの反面、設備投資費や作業者の教育コストがしばしば課題として挙げられる。こうした課題を解決するのが、ローランド ディー. ジー.が独自開発して自社内運用を行う、モノづくり支援システム「D-PICS」と、それに対応したデジタル屋台だ。担当者にD-PICSの詳細や強みを聞いた。
2000年頃から開発が進められてきたD-PICS
D-PICS開発の歴史は2000年前後にまでさかのぼる。従来の大量生産から、多品種少量生産へと生産方式のトレンドが移行したことや、3D CAD対応PCの低価格化が進んだことを背景に、全社でのデータの有効活用方法などを模索する「デジタルファクトリー構想」が持ち上がる。D-PICSやデジタル屋台はその過程で開発された。
当初、デジタル屋台は1つの製品を1人が完成まで担当するという体制を取っていた。しかし、2010年代に入るとこれを変え、作業工程をモジュール化して切り出し、1人に割り当てる工数を減らした。
体制変更の理由について渥美氏は、「プリンタ製品カテゴリーでの他社との価格競争や、製品の高品質化要求が厳しくなってきた。このため、海外生産に乗り出して現地従業員を雇ったが、海外従業員の雇用がどの程度定着するか不透明だった。そこで、従業員1人当たりの工数を減らすことで、離職時に生産ラインに与える影響と、新人の教育コストを減らせるようにした。これが、現在の生産体制確立につながっている。また、1人1台生産の時と異なり、屋台周辺のツールを改善していって、製品の品質改善を図れるようにしたのもこの時期のことだ」と語る。
“人中心のデジタル化”を目指すローランド ディー. ジー.
こうした変遷の中でもローランド ディー. ジー.が一貫してきたのが、“人中心のデジタル化”という方針だ。
「『いかに従業員がクリエイティブに働けるか』という問いかけが大事だ。モノづくりの価値を上げる上では品質向上や、スピード向上も重要だが、自分の能力を十分に発揮できる場を作業者に提供することも、同様に重要である。D-PICSでは作業者にデジタル屋台を1人1台与えることで、いきいきと働き、達成感を得てもらう。同時にそれらをQCD向上に結び付けるにはどうすればよいかを考え続けている」(渥美氏)
今後の開発課題としては、屋台間でのモノの受け渡しなど、工程間の「つなぎ」におけるロスタイム低減が挙げられる。この他、体調不良による欠勤など突然の人的アクシデントに対して、現場レベルで柔軟に対応できる体制を整えるなど、“人中心のデジタル化”を進める上で障壁となりがちな問題の解決を図っていく、と渥美氏は語った。
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