コロナ禍で生まれた3Dプリンタ活用の流れが、デジタル製造を加速:MONOist 2021年展望(2/2 ページ)
コロナ禍で、あらためてその価値が再認識された3Dプリンティング/アディティブマニュファクチャリング。ニューノーマルの時代に向け、部品調達先や生産拠点の分散化の流れが加速していく中、サプライチェーンに回復力と柔軟性をもたらす存在として、その活用に大きな期待が寄せられている。2021年以降その動きはさらに加速し、産業界におけるデジタル製造の発展を後押ししていくとみられる。
ますます高まる、3Dプリンティング/AMへの投資意欲
以上のように、サプライチェーンに回復力と柔軟性をもたらす存在として、3Dプリンティング/AMに注目が集まっているわけですが、実際、HPが世界中の製造業のエグゼクティブ2000人以上を対象に行った調査「HP Digital Manufacturing Trend Report」では、回答者の99%が「デジタルマニュファクチャリング技術が経済成長につながり得る」と答え、85%の回答者が「AMへの投資を増加する予定である」としています。
この調査レポートの通りであれば、2021年以降、3Dプリンティング/AMの導入・活用を検討する企業はますます増えていくことになるでしょう。
少し前のデータにはなりますが、IDC Japanが2020年6月に発表した「国内インダストリアル/3Dプリンタ市場の実績と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を含めた今後の市場予測」のレポートを見てみると、2020年の国内3Dプリンタ市場の支出額は、COVID-19の影響で販売にマイナスの影響が生じ、2019年の実績を大きく下回ると予測。それと同時に、2021年以降はコロナ禍の緊急事態対応に際して、3Dプリンタを活用した部品製造などの事例が国内外で多数見られたことから、大きく成長に転じる可能性が高いとの見解を示しています。
効果を短期間で最大化するには第三者との連携が重要
2021年以降、3Dプリンティング/AM市場は上向きに転じる見通しですが、導入・活用、そしてその効果を最大化するにはクリアすべき課題も多くあります。
ご存じの通り、3Dプリンタは印刷ボタンを押すだけで、3Dデータ通りの完全なコピーが手に入るわけではありません。使いこなすには、装置や材料の特性を理解しておく必要がありますし、設定やパラメータの調整などのノウハウも求められます。また、そもそもどういったアプリケーションに3Dプリンティング/AMを適用すべきかを適切に判断し、設計そのものを最適化する(DfAM:Design for Additive Manufacturing)スキルなども必要です。要するに、3Dプリンティング/AMの活用には“専門スキルを有する人材の確保”が欠かせないのです。
既に何年も前から3Dプリンティング/AMの活用に取り組んでいる企業であればまだしも、これから導入して、自社ビジネスを変革したり、業務プロセスを革新したりしようとする企業にとって、自社単独での導入、活用は非常にハードルが高いといえます。そこで活用すべきなのが、コンサルティングです。例えば、3Dプリンタメーカーが構築したエコシステムを活用して、導入検討から立ち上げ、量産適用までサポートしてくれるものなどが登場しつつあります。
今後、新規に3Dプリンティング/AMの活用を検討している企業は、こうした第三者の手を借りるなどして、その効果を短期間で最大化することが求められるのではないでしょうか。またその際、並行して、プロジェクト担当者を自社の3Dプリンティング/AMの専任者として育成していくことも忘れてはなりません。
さらに、3Dプリンタを活用した新たなユースケースを確立し、イノベーション創出につなげていくには、業種・業界の垣根を越えた提携や、独自のノウハウや知見などを持ったパートナーとの協力関係の構築もますます必要になっていくでしょう。この記事の前段で述べてきた新たな部品調達の手段としての3Dプリンティング/AM活用だけにとどまらず、3Dプリンタにしか実現できないモノをいかにして生み出していくかも、(ずっと言われてきたことでもありますが)導入企業にとって重要な課題であり、チャレンジすべきテーマであるといえます。
コロナ禍で期せずして再度盛り上がりをみせる3Dプリンティング/AM活用の動きは、かつての“3Dプリンタブーム”と比べて、一過性のものではなく、地に足がついた大きな流れのように感じます。
ここで紹介してきたように、新たな部品調達の手段として量産適用などを進めていくにはクリアすべき課題も多く残されていますが、導入企業が増えていけば、そこから新たな活用法や取り組みも生まれていき、装置、材料、ソフトウェア、設計手法といったさまざまな面での進展も大いに期待できます。2021年は、そうした次のステップにつながる3Dプリンティング/AM活用の可能性、そしてデジタル製造の発展を、これまで以上に感じられる1年になるのではないでしょうか。
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