コンテナサイズの超巨大3Dプリンタが設計を一から見直してパワーアップ:3Dプリンタニュース
EXTRABOLDは、12フィートコンテナサイズの大型3Dプリンタ「EXFシリーズ」の最新機「EXF-12」を発表。EXFシリーズのコンセプトはそのままに、構造上の課題や機構を全面的に見直し、一から新規設計を行ったという。
EXTRABOLDは2020年5月11日、12フィートコンテナサイズの大型3Dプリンタ「EXFシリーズ」の最新機「EXF-12」を発表した。
同社は2017年から、「一般的な樹脂ペレットを使用した低コストな大型造形」「コンテナに設置することによる可搬性の実現」をコンセプトに掲げ、FDM(熱融解積層)方式の大型3Dプリンタの開発に取り組んできた。
前機種の「EXF-10」は、2018年6月開催の「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」の会場でお披露目され(当時は「試作初号機」として紹介)、それ以降さまざまなプロジェクトでEXF-10を活用しながら、得られた知見などを設計にフィードバックし、改善を進めてきた。
さらなる大型パーツの造形に対応、安定性や精度もアップ
最新機であるEXF-12は、EXFシリーズのコンセプトはそのままに、構造上の課題や機構を全面的に見直し、一から新規設計を行った。
最大造形サイズは前機種よりもさらに大きく、1700×1300×1020mmを確保し、自動車や建築資材、家具などをはじめとする大型パーツの試作および実部品の造形に対応する。
今回新たに、樹脂ペレットに対応する独自開発のFDM方式プリントヘッドを2つ備えたデュアルヘッドを採用。スクリューの大型化を実現したことで前機種よりも吐出量が増加し、かつ安定した出力が可能となった(換算値:1時間当たり15kg)。また、造形精度の向上に関しては、工作機械メーカーとの協業により実現し、出力する庫内(ビルドエリア)を1つのチャンバーとして囲うことで温度管理の改善を図り、より安定した吐出を可能にした。
さらに、造形物の取り外しが容易に行えるバキューム搭載のビルドプレート、各種センサーによる出力状況のフィードバック、遠隔操作、樹脂ペレット搬送時の詰まり防止といった改善、強化が図られている他、将来的な拡張、仕上げ加工までの一貫したモノづくり、さらなる高精度造形の実現を視野にファナック製の制御ユニットも採用している。
新型コロナをはじめ、非常時における「EXF-12」の可能性
現在、同社は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策支援の一貫として、大阪大学が中心となり推進しているフェイスシールドの量産化、無償提供支援プロジェクトに賛同し、EXF-12を活用。40個のフェイスシールド用フレームを1時間で製造できることを確認し、フル稼働した場合、1日200〜300個程度の生産能力があることを示したという。
なお、本体は12フィートコンテナへの設置を前提に設計されているため、陸路、航路問わず輸送可能である。この特性を生かし、非常時においては、被災地や避難所などに輸送/移設し、身の回りに必要な家具や日用品などの造形を行うことで支援活動にも活用できるとする。同社ではベッド、椅子、ベンチなどへ変形可能な仮設モジュールの製作にも取り組んでいる。
引き続き、同社は細かなユーザビリティの向上を視野に入れたアップデートを行っていくとし、併せてEXFシリーズの開発プロジェクトに賛同してくれる材料メーカーを募り、リサイクル材やバイオプラスチック、機能性樹脂などの吐出にも取り組んでいく考えを示す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コンテナで運ぶ超大型3Dプリンタ、自動車のボディーも出力できる
EXTRABOLDは、「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」のエス.ラボブースにおいて、樹脂ペレットを用いて造形を行う超大型3Dプリンタの参考展示を行った。 - 単なるモノづくりの枠に収まらないデジタル職人たちが生み出すプロダクトの数々
デジタルアルティザンは2019年4月11日、新拠点である「DiGITAL ARTISAN STUDIO」のオープンハウスイベントを開催。大型3Dプリンタや全身3Dスキャナーによる体験展示、デジタル技術を活用したアート作品、クライアントワークの成果物などの一部を公開した。 - 大阪大がフェイスシールドの量産・無償配布に向けクラウドファンディング
大阪大学は、クリアファイルを取り付けることでフェイスシールドとして利用できるフレームを大量生産し、医療機関へ順次無償配布することを目指すクラウドファンディングプロジェクト「新型コロナ:命を守るフルフェイスシールドをいち早く医療現場へ」を開始した。 - クリアファイルが新型コロナ対策用フェイスシールドに、3Dデータ無償公開
大阪大学大学院医学系研究科の特任教授である中島清一氏と招へい教員の室崎修氏らは、メガネフレームメーカーのシャルマンとの産学連携により、一般的なクリアファイルをシールドとして使用する安価なフェイスシールドの開発に成功したと発表した。 - 【緊急調査】新型コロナ対策支援における3Dプリンタ活用
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、重症患者の治療に必要とされる人工呼吸器、さらには診察・治療のための検査キットや医療用マスク、防護具などが不足している。こうした状況を受け、今積極的に支援活動を展開し、その輪を広げようと、さまざまな施策を打ち出しているのが3Dプリンタメーカーだ。 - 変わりゆくクルマのインテリア、JAID「1kg展」の3Dプリント作品が示すその先
国内自動車メーカー7社のインテリアデザイナーが参加するJAIDが2019年1月12〜25日にかけて3Dプリント作品の展示会「1kg展」を開催した。CASE時代を迎え、人とクルマの間にあるインタフェースでもあるインテリアは、エクステリア以上に大きく変わろうとしている。1kg展ではどのようなインテリアの未来が示されたのだろうか。