米国AIレジレス企業と組んだ富士通、生体認証技術をリテールにどう生かすか:スマートリテール(3/3 ページ)
2020年12月、富士通がAIレジレスソリューションを展開する米国のZippinとの本格的な協業開始を発表した。ZippinのAIソリューションが持つ強みとは何か、また、富士通はレジレス分野でどのような市場展開を構想しているのか。富士通の担当者に話を聞いた。
レジレスソリューション導入は「高コスト」?
MONOist 先ほど、Zippinのソリューションの強みとして「他社よりも安価に導入可能」という点を挙げていましたが、それでも、先日の発表会によるとソリューションのイニシャルコストは1000万円になるとのことでした。マイクロマーケットの中でも導入できる店舗は限定されるのではないでしょうか。
石川氏 コスト低減は継続的に取り組むべき課題だと考えている。今後、Zippinのソリューションを大規模に市場展開できるようになれば、それに伴い運用コストは削減できるだろう。
ただ、Zippinのソリューションを導入することで、人材関連のコスト削減と、リアルタイム購買分析が可能になる。この点がイニシャルコストを上回る大きなメリットになると考える。
人材関連のコストについていえば、レジレス業務は小売り店舗における業務負担量の30〜40%程度を占めているといわれており、これを削減できるのはインパクトが大きい。また人件費だけでなく、人材の採用や教育コストまで含めて考えると、さらに大きなコスト低減につながるはずだ。食品衛生法などの法的ハードルもあり、店舗オペレーションを0人にすることは難しいが、レジレスだけでなく商品陳列作業や受発注を自動化する取り組みも進めて、業務省力化に寄与するソリューション開発を進めていく。
また、ソリューションを通じて商品の品ぞろえをリアルタイム分析できるようになるのも大きな利点だ。店舗が狭小なマイクロマーケットでは、売れる品ぞろえをどれだけ用意できるかが重要になる。今後はリアルタイムで商品の販売状況を確認、分析し、顧客の年代分析と併せてバックヤードと連携させるようなシステム開発もしていきたい。
MONOist 今後の展開はどのように考えていますか?
石川氏 2023年までに100店舗以上の店舗展開を考えていて、2021年にも数店舗の候補を検討中で着実に進めていきたい。
リテールと生体認証技術の組み合わせに関するビジョンとしては、これから“つながる世界”の実現をさらに追求していきたいと考えている。生体認証技術は現在でも調剤薬局や銀行の手のひら静脈認証やセキュリティゲートなどで使われているが、小売店舗などの購買シーンでも認証技術が使えるようになればさらに利用者が増えることになるだろう。
その際にあればよいと考えているのが、登録情報を共通化する仕組みだ。区役所や病院などで一度生体情報を登録しておけば、例えば、初めて利用する小売店舗でも、来店前に逐一情報を登録する必要がなくなり、利便性が向上する。
生体認証技術に関する国内の研究開発は、世界的に見ても先進的な内容がいくつもある。一方で、文化的な問題として、国民に生体認証技術への抵抗感のようなものがあり、普及が進みにくい側面もある。ただ、ここ1〜2年、特にコロナ禍の影響が拡大してからは非接触かつなりすましのリスクが少ない認証技術への注目度が高まっており、状況が変わってきていると感じる。
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