円筒度0.5μm/mを達成したロール研削盤、匠の技で高精度組み付けを実現:FAニュース
ジェイテクトは、高精度ロール研削盤「GR7i-400ULTIMATE」を発表した。先人の熟練技術や現代の造り込み技術が取り入れられており、0.5μm/mと高精度の円筒度を達成。また、AI機能の搭載により、ロール部テーパや加工条件を自動で調整する。
ジェイテクトは2020年11月16日、高精度ロール研削盤「GR7i-400ULTIMATE」の販売を開始した。先人の熟練技術や、現代の匠とも言える造り込み技術を取り入れている。
GR7i-400ULTIMATEは、砥石台とテーブル送りのスライド機構に先人の技術「TOYODA STAT BEARING」を応用、進化させて、研削抵抗を受けても静圧スライドが姿勢を維持するよう性能を高めた。
また、TOYODA STAT BEARING技術を主軸台、心押台にも採用し、動くもの全てが金属接触しない技術を開発した。TOYODA STAT BEARING技術は回転精度の向上に加え、工作物のセンター穴形状による加工精度への影響を抑制することから、軸加工に必要だった振れ止めが不要になった。これにより、大幅に段取り替え時間を削減できる。
さらに、テーブルのロー&ワイド設計で工作物支持の剛性を向上したほか、製造開始から機械の据え付けが完了するまで、スライド真直度を変化させないようベッド構造を最適化した。ベッド製造においては、研削熱の影響を最小限に抑える方法を確立した。
GR7i-400ULTIMATEは、これらの技術や設計、加工上の工夫に加え、同社の熟練作業者だけが持つ匠の技を駆使し、精密に組み付けられている。その結果、0.5μm/mと高精度の円筒度を達成している。
ロール部テーパや加工条件の調整は、AI(人工知能)機能により、自動化している。ロール部テーパの調整は、熟練作業者が手動でテーパ測定と受け台調整をする場合、60分かかっていた。GR7i-400ULTIMATEでは、といし台上測定装置の測定値をAIが解析し、補正指令をNC受け台に送って自動調整できるため、作業時間を40分短縮する。
めっきなどの素材形状のばらつきによる加工負荷もAIで検知し、すぐに加工条件を自動補正する。人手による作業やめっき割れなどによるやり直し作業が不要になり、生産性向上に貢献する。
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