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いまさら聞けない 3Dプリンタの後処理デジファブ技術を設計業務でどう生かす?(7)(3/3 ページ)

3Dプリンタや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第7回は、造形終了後の“後処理”にフォーカスし、その手順について詳しく解説する。

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2次加工という選択肢

 3Dプリンタで造形したパーツなどは、どうしても積層痕や表面のザラザラ感が残ってしまうため、研磨や切削加工といった“2次加工”を施すことがあります。

 そのためには、あらかじめ仕上げ代(しろ)を加味した3Dモデルを用意する必要があります。形状全体を削るのであればモデルサイズを大きめに、穴加工であれば小さめに設計し、研磨や切削加工を施すことで精度を追求できます。

 また、仕上げ代だけではなく、切削加工がしやすいようにつかんだり、挟んだりして、位置決めができるように配慮した3Dモデルを設計して3Dプリントするといった工夫も重要です。特に、金属材料を積層造形する3Dプリンタは、2次加工を施して、精度の良いパーツを製作することが多くあります。

後処理を考えた上でのモデル/サポート材の作成と機種選定

 今回は、3Dプリント後の後処理について紹介しました。サポート材を手作業で除去する場合、除去したいサポート材に対して、ニッパーやペンチなどの工具が届かなければなりません。複雑に入り組んだ形状などは、サポート材をきれいに除去できない可能性もあります。

 サポート材の除去部分など、外観品質に影響がある場合には、紙やすりなどでの磨き作業が必要となります。射出成形部品を設計する上でパーティングラインやランナーの位置を気にするのと同じように、3Dプリンタでも“サポート材の配置箇所が適切になるように積層方向などを考慮しながら設定する”ことが重要です。

 サポート材の除去作業の手間を考慮して3Dモデルの形状を設計したり、場合によっては形状を分割したりして、造形後に接着するという方法をとる場合もあります。連載第2回「3Dプリンタを活用した設計者の“働き方改革”」でも触れましたが、“3Dプリンタの活用を前提とした設計力”が問われてきます。

 3Dプリンタによっては、サポート材を水やアルカリ溶液などで溶かすことができたり、水圧で吹き飛ばしたりできるものもあるので、機種や材料を選定する際に考慮するとよいでしょう。

 結合剤噴射(インクジェット式)や粉末床溶融結合(SLS/SLM)などの造形方式を採用する3Dプリンタの場合、敷き詰められた粉末材料にレーザーを照射したり、接着剤を塗布したりなどして材料を硬化させて積層していくため、未硬化の周りの粉末がサポート材の役割を果たします。

 最後にお伝えしたいのは、“とにかく経験してみる”ことです。後処理を経験してみることで大変さや苦労がよく分かります。時には誤って造形物を壊してしまうなどの失敗もありますが、そこから学ぶことも多くあります。「百聞は一見にしかず」です。3Dプリンタを購入する前に後処理も実際に体験してみることをオススメします。



 今回、後処理という面倒な作業について紹介しましたが、3Dプリントして形状を確認できる、使用できるメリットは多くあります。後処理が本当に面倒であれば、サービスビューローなどを活用する手もありますが、知識としては知っておくことで、3Dプリントに適した設計の実現(DfAM:Design for Additive Manufacturing)につながっていくはずです! (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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