いまさら聞けない 3Dプリンタの後処理:デジファブ技術を設計業務でどう生かす?(7)(2/3 ページ)
3Dプリンタや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第7回は、造形終了後の“後処理”にフォーカスし、その手順について詳しく解説する。
液槽光重合(光造形/SLA)の場合
本連載では、例として、FDM方式の3Dプリンタを取り上げることが多くありますが、「液槽光重合(光造形/SLA)」の3Dプリンタの後処理についても紹介します。
特に最近では、数万円で購入できるSLA方式の3Dプリンタも登場しており、気軽に導入できるようになってきました。後処理も導入の決め手となりますので、以下の内容をSLA方式3Dプリンタの導入検討にお役立てください。
1.造形物の洗浄
SLA方式の場合、造形テーブルから造形物を取り外す作業は、基本的にFDM方式と同じですが、サポート材を除去する前に行う作業があります。
それは、アルコールによる造形物の洗浄と2次硬化です。アルコールは「イソプロピルアルコール(IPA)」を主に使用します。アルコールの購入と保管が必要となりますが、最近は水で洗える手軽な材料も登場しています。
SLA方式では、「レジン」と呼ばれる光硬化性の液体樹脂を材料に使用し、紫外線を照射して硬化させながら積層していきます。少しずつ造形物が液体樹脂材料のプールの中から引き揚げられていくわけですが、造形物の表面にベトベトした“未硬化の樹脂”が付着してしまうため、洗浄作業が必要になります。
洗浄時間は、3Dプリンタの機種や材料によって変わってきますが、数分〜十分程度行います。長期間アルコールに漬け過ぎると造形物が溶けてしまう可能性があるので、説明書や注意事項をよく読んでから行ってください。
2.造形物の2次硬化
洗浄後、造形物を乾燥させた後、2次硬化に移ります。
2次硬化は、紫外線ランプや太陽光などの光を照射して行います。材料の種類によって、2次硬化が不要なものもありますが、一般的に高耐久樹脂や耐熱性樹脂などは、2次硬化をしないと本来の性能を発揮できません。2次硬化処理を施すことによって、完全に硬化されていない層と層との間を硬化させます。
図3 SLA方式の後処理で一般的に必要なアルコール(左)、あると便利な機器の例として、洗浄機「Form Wash」(中)、2次硬化装置「Form Cure」(右) ※出典:Formlabs(https://formlabs.com/jp/) [クリックで拡大]
3Dプリンタの機種によって、専用の洗浄機や2次硬化装置が販売されています。太陽光や市販のネイルドライヤーなどでも代替可能ですが、3Dプリンタと2次硬化する紫外線の波長を合わせるのが望ましいとされています。
3.サポート材の除去
洗浄し、2次硬化させた後は、サポート材の除去になります。
SLA方式の場合、サポート材は造形物と同じ材料になるので、FDM方式と同じくニッパーなどを使用してサポート材を除去していきます。SLA方式では、造形物とサポート材の接続部を細くするなどして、切り離しやすくするといった工夫がよくとられます。
サポート材除去後の仕上げについては、FDM方式と同様に、紙やすりで表面を仕上げ、サーフェーサーを塗布して塗装するといったことも可能です。
SLA方式の場合、FDM方式と比べて繊細な形状や表面を滑らかに3Dプリントできる特徴があります。しかし、前述したような後処理が必要になりますので、3Dプリンタの導入を検討する際は、この点(後処理の手間)についても十分に考慮すべきでしょう。
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