顔と氏名を瞬時にひも付け特定/追跡、TDSLの顔認識AI搭載ソリューション:人工知能ニュース(2/2 ページ)
東芝デジタルソリューションズは2020年11月24日、同社が独自開発した顔認識AIエンジンを搭載して、映像内の人物特定を行うソリューション「カオメタ」の説明会を開催した。独自の顔認識AIエンジンと氏名と顔をひも付けたデータベースを連携させることで、映像内の人物を特定し、追跡し続けることが可能だ。
「顔辞書」にない顔も登録可能に
また、TDSLは2020年11月16日に、カオメタの新機能として「検出顔管理機能」を発表した。従来のカオメタは顔辞書に登録した人物だけを認識するという仕組みだった。しかし、検出顔管理機能を使うことで、辞書登録されていない顔を識別して、「ID:1」「ID:2」といった具合に、仮の氏名で顔辞書に追加することが可能となった。これによって解析時点では顔辞書に未登録の人物でも、「ID:1」「ID:2」といった名前を後から本名に変えて登録できる。
選挙候補者のオンエア映像が2倍に増加
TDSLは現時点でのカオメタの主な活用先として、放送業界への導入をイメージしている。
放送業界では、特に生放送の番組などで、映像内の人物に誤った名前のテロップを表示しないようにするために、その人物に詳しい人材などが数十秒の時間をかけて本人確認作業を行っていた。カオメタを導入すれば本人確認を瞬時に行えるようになるため、こうした確認作業の省力化や効率化につながる可能性がある。また、映像に氏名などのメタデータを自動付与するため、アーカイブ後に映像内の特定人物検索などを行いやすい。視聴率の推移データと組み合わせることで、高視聴率時に映像内に映っていた人物などを把握し、次回以降の番組作りに生かしやすくなるという。
既に日本テレビとの実証実験にも取り組んでいる。2019年に実施された参議院選挙の特別番組制作を目的に、カオメタが試験的に導入された。同実証実験では、日本テレビの放送用アーカイブの中に映った選挙候補者の顔画像などを2000枚程度、顔辞書にあらかじめ登録した。これにより、カオメタによる候補者の認識率99.74%を達成。瞬時に高精度で人物推定ができるようになったことで、撮影した候補者の映像のオンエア率を、従来と比較して約2倍にまで増やせたという。
「これまで選挙番組などでは、当選者や落選者に誤った氏名を表示するのを防ぐため、候補者に詳しい番組スタッフが一人一人、顔と氏名を確認するという厳重な確認方式を取っていた。しかしカオメタを使えば、顔と氏名のひも付けがリアルタイムで行える。もちろん最終的にはスタッフが目視で確認するが、全体の確認作業時間を大きく短縮することができた」(村田氏)
カオメタの将来展開について村田氏は「放送業界以外でも、建物の入退室管理を通じたセキュリティ対策や労務管理にも使えると考えている。さまざまな業界の顧客から声がけをもらっているので、それぞれの要望に応じて当社も何をできるかを一緒に考えていきたいと考えている」と説明した。
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