CASEで変わるワイヤハーネス、2024年には売上の半数がアルミハーネスに:材料技術
古河電気工業は2020年11月17日、オンラインで自動車部品事業の説明会を開いた。古河電気工業 自動車部門事業部門長の阿部茂信氏が出席し、事業の現状や今後の戦略を説明した。
古河電気工業は2020年11月17日、オンラインで自動車部品事業の説明会を開いた。古河電気工業 自動車部門事業部門長の阿部茂信氏が出席し、事業の現状や今後の戦略を説明した。
同社は2020年度までの中期経営計画「Furukawa G Plan 2020」を推進中だ。自動車部品事業では、「軽量化」「エネルギーマネジメント」「安全システム」の各領域において、既存の製品群の進化と次世代製品の創出に取り組んでいる。2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による海外子会社の操業低下の影響が大きい。そのため上期は収益が大きく低下したものの、下期は新車市場の回復もあって想定以上の収益水準となり、ほぼ前年同期並みを見込めるという。ワイヤハーネスの出荷数も下期には前年並みに回復する。
ワイヤハーネス分野では、車両の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネスがけん引役となって受注を積み上げている。アルミワイヤハーネスは、2024年に自動車メーカー8社75車種で採用される見通しで、ワイヤハーネスの売上高のうち51%をアルミワイヤハーネスが占める見込みだという。アルミワイヤハーネスは、日系自動車メーカー以外では欧州からの需要が高まっているという。
アルミワイヤハーネスの需要拡大に対応して、2019年にはベトナムの生産拠点でアルミ電線の生産能力を増強した。また、北米を中心としたグローバルモデルへの供給体制も強化している。同社が今後最も伸長すると見込む北米向けのワイヤハーネスは、以前はメキシコ拠点1極体制での生産だったが、2019年にフィリピンの生産能力を増強し、ベトナムを含むアジアとメキシコの2地域での最適地生産としている。こうした生産への先行投資により、足元では償却費や生産準備費用の負担が大きくなるものの、2022年度以降に収益の刈り取りが本格的にスタートするという。
今後の製品ごとの戦略についても説明した。ワイヤハーネスは、BCP(事業継続計画、Business Continuity Plan)に対応したグローバルサプライチェーンの強化に加えて、車両の軽量化需要の取り込み、北米向けワイヤハーネスへの適切なタイミングでの増産投資、防食端子の採用拡大に向けたサイズのバリエーション充実などに取り組む。
ワイヤハーネスの生産拠点での自動化も進め、生産性を向上させる。現在は、電線を切って端子を圧着する前工程は完全に自動化した。検査工程でも画像認識技術を活用しているが、一部で目視での確認作業が残っている。ワイヤハーネスを組む工程は、小型ハーネスでは自動化での量産がスタートしたが、大型ハーネスはロボットで作業を行う難易度が高いとしている。
電動化の進展に向けては、ハイブリッド車(HEV)向け高圧ワイヤハーネスに加えて、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)向けの高圧端子台やジャンクションボックスを量産している。ワイヤハーネスでは、アルミを含め新素材の適用を検討し、軽量・柔軟・省スペースを実現する電線とコネクターの開発を進めている。アルミ以外の新素材としては、車載ネットワーク向けの銅合金、屈曲や振動が厳しい部位向けにメッキを施した樹脂、車両の大容量高速通信に備えたファイバーなどを検討している。銅合金ワイヤハーネスは、製品化前の最終評価を行っている段階だ。「電力線は電線でやるが、通信線はデータ容量が増えるにつれてさまざまなソリューションが必要になる。ワイヤレス通信などにも投資していきたい」(阿部氏)。
ステアリングロールコネクターは、グローバルシェア50%に向けた拡販を推進する。エアバッグの法規制により市場拡大が見込まれる地域での需要の取り込み、自動運転中の車内レイアウト変更など次世代自動車を想定した製品開発も強化する。
鉛バッテリーの状態検知センサーは、電源マネジメントや自動運転車の安全対策で需要が拡大中だ。自動運転車では、駆動用バッテリーの突然の機能失陥を事前に予知する仕組みが求められているという。足元では、トヨタ自動車の「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に対応した高機能バッテリー状態検知センサーの量産がスタートしており、今後のシェア拡大を見込む。準ミリ波レーダーは開発が完了し、ADAS(先進運転支援システム)だけでなく、建設機械や農業機械、インフラなどに向けても用途を拡大している。
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