EVで増える銅加工を容易に、古河電工がハイブリッドレーザー技術を製品化:金属加工技術(2/2 ページ)
古河電工は2020年11月16日、青色ダイレクトダイオードレーザー(青色DDL)と近赤外(IR)ファイバーレーザーを組み合わせたBlue-IRハイブリッドレーザー「BRACE(ブレイス)」を2021年1月18日に発売すると発表した。
電動車の銅関連部品の加工がターゲット
「BRACE」はレーザー発振器であり、レーザー加工機メーカーの製品に組み込んだり、銅加工を行う工場などに導入しこれらの加工機と組み合わせたりすることが必要になる。古河電工 研究開発本部 プロジェクトチームリーダーの行谷武氏は「基本的には自動車メーカー、自動車の主要部品メーカー、レーザー加工機などを提供する設備メーカーがターゲット顧客となる」と述べている。
例えば、リチウムイオンバッテリーの生産工程で「BRACE」の導入を考えた場合、電極切断、積層、集電溶接、封止・封栓、モジュール化などのそれぞれで生産性工場や品質向上を実現できるという。
実際に、集電溶接の場合などで試験した場合、箔溶接時の課題である破れや穴もなく、溶接中のスパッタやブローホールの発生を抑制できたという。これにより「リチウムイオン電池の小型化や大容量化にも貢献できる」(行谷氏)としている。
毎年新製品をリリースしカバー範囲を拡大
「BRACE」の標準価格は3900万円。古河電工では、「BRACE」の有効性を実体験できるアプリケーションラボを2021年1月25日に、同社千葉事業所内に開設予定としている。これにより、ユーザーの持ち込むサンプルワークの試作加工や加工条件のコンサルテーションなどを行えるようにするという。
今後はまずユーザーへの提案を進め、用途を拡大していく方針だ。カバー範囲の拡大も進める。「BRACE」第1弾製品を2021年に発売した後、2022年には次世代製品を投入する予定だ。さらに2023年にも新たな製品を投入し「現状ではできることは限られるが、顧客ニーズに合わせて、製品を強化することで、カバー範囲を広げていく」と行谷氏は語っている。これらの取り組みにより2025年度には100億円規模の売上高に成長させる方針である。
関連記事
- 銅溶接をスパッタレスで、青と近赤外のハイブリッドレーザー技術を開発
古河電気工業は2020年6月5日、日亜化学工業と高出力青色レーザダイオードモジュールを共同開発し、高出力青色レーザー発振器と近赤外レーザーを組み合わせたハイブリッドレーザーによる溶接ソリューションを展開すると発表した。 - 鉛バッテリーがリチウムイオン電池を超える、古河電工がバイポーラ型蓄電池で
古河電気工業と子会社の古河電池は、鉛バッテリーをベースにした「バイポーラ型蓄電池」を共同開発したと発表した。再生可能エネルギーの発電量変動抑制に用いられる長周期向けとなっており、電力貯蔵用蓄電システムを構築する場合にリチウムイオン電池と比べてトータルコストを半減できるとする。 - フィン造形やギア加工が1台で! ハイブリッド複合加工機の魅力
ヤマザキマザックは、「第29回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」(2018年11月1〜6日、東京ビッグサイト)において、青色レーザーを用いた金属積層造形、摩擦撹拌(かくはん)接合、ギア加工・計測機能を備えた“ハイブリッド”複合加工機をそれぞれ展示し、同社が持つ工程集約技術を訴求した。 - 金属3Dプリンタ活用3つのハードルと日本のモノづくりの今後
金属3Dプリンタ関連の技術開発が急速に進み、海外を中心に製造事例も聞こえてくるようになった今日、その動きに取り残されないよう、従来の考え方や経験にとらわれない仕事をしていくことが、今後はより重要になっていきそうだ。 - 金属3Dプリンタは量産対応とともに「誰でも使える」を目指す、ソフトウェアも続々
東京ビッグサイトで「第29回 設計・製造ソリューション展(DMS2018)」が開催された。その中で金属3Dプリンタは海外を中心に10社以上の製品が並んだ。 - 足し引き自在で効果は無限大! 金属3Dプリンタと切削加工の複合機投入が本格化
「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」で大きな見どころの1つとなったのが、工作機械と金属3Dプリンタの複合機だ。金属を「足す」3Dプリンタと金属を「引く」切削加工機が組み合わさることでモノづくり現場にどういう価値をもたらすのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.