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商品改良時の特許保護と海外における特許取得の注意点弁護士が解説!知財戦略のイロハ(7)(3/3 ページ)

本連載では知財専門家である弁護士が、知財活用を前提とした経営戦略構築を目指すモノづくり企業が学ぶべき知財戦略を、基礎から解説する。今回は、製品発売後に機能改良などリニューアルを加えた場合、特許や商標などの知的財産面で留意すべき点を解説する。

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海外で商標を取得するための3つの方法

 特許の海外出願を検討する際は、商標出願も検討しましょう。以下、海外に出願する際の手続きをそれぞれ簡単に紹介します。

(1)各国へ直接出願

 特許の場合と同様、権利の取得を希望する国の特許庁に、その国の国内法に基づき、その国の言語で出願書類を作成し、出願する必要があります。現実的には、日本国内の法律事務所や特許事務所に相談し、各国の代理人を紹介してもらい、国内の代理人を通じて当該国の代理人とコミュニケーションをとりながら出願書類を作成することとなるでしょう。

(2)国際登録出願(マドプロ出願)

 マドリッド協定の議定書に基づく国際登録出願(以下「国際出願」といいます。)とは、自己の日本国内の商標出願、または商標登録を基礎として、保護を求める締約国(締約国の総数は100カ国を超える)に、国際的に統一された出願書類(英語で作成)を日本の特許庁に提出することで、指定した締約国(指定国)に出願したのと同じ効果を得られる出願制度です。登録された商標権の存続期間は、国際登録日から10年間となります。

 国際出願はあくまで国際段階での出願手続きであり、商標権を取得するためには、指定国ごとに商標登録の可否についての実体審査を受ける必要があります(実体審査を行わない国(無審査主義国)もあります)。しかし、指定通報を受けた指定国の官庁は、拒絶理由がある場合には、通報日から原則1年(指定締約国官庁によっては18カ月)以内に拒絶通知を行わなければなりません。このため、早期権利化が実質的に実現します。

 また、マドプロでは、商標の権利関係は、国際事務局により一元管理されるため、更新、権利移転、名義変更などの手続きを国ごとに行う必要がないというメリットもあります。

(3)欧州連合商標(EUTM)

 EUTM制度によれば、EUIPO(欧州連合知的財産庁:European Union Intellectual Property Office)における1件の登録でEU加盟国全体に及ぶ商標権の取得が可能となります。EUTMは、権利の登録、移転、放棄、取消、無効などについて、常に一体のものとして扱われ、権利の存続期間は出願日より10年で更新可能とされています。なお、マドプロを利用してEUTM出願をすることもできます。

 ただし、EUTMの場合、加盟国全域において登録が可能であるかという観点が重視されます。例えばマイナーな言語では識別性がない、また、1カ国だけでも類似商標登録が存在すれば出願が拒絶されるため、直接出願より拒絶や異議申立を受ける可能性が高くなります。拒絶されると、加盟国全域における出願が無効になることとなります。また、登録は1件しか行えないので、登録後に登録の無効や取消が確定した場合には、全地域で登録がなくなってしまうことにも留意してください。

終わりに

 今回は、製品の改良時と海外展開していく場合の主として知財の観点からの留意点を挙げました。次回は、模倣品対応を含めた紛争時の留意点をご紹介していければと思います。

筆者プロフィール

山本 飛翔(やまもと つばさ)

2014年3月 東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了

2014年9月 司法試験合格(司法修習68期)

2016年1月 中村合同特許法律事務所入所

2018年8月 一般社団法人日本ストリートサッカー協会理事

2019年〜  特許庁・経済産業省「オープンイノベーションを促進するための支援人材育成及び契約ガイドラインに関する調査研究」WG・事務局

2019年〜  神奈川県アクセラレーションプログラム「KSAP」メンター

2020年2月 東京都アクセラレーションプログラム「NEXs Tokyo」知財戦略講師

2020年3月 「スタートアップの知財戦略」出版(単著)

2020年3月 特許庁主催「第1回IP BASE AWARD」知財専門家部門奨励賞受賞


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スタートアップの皆さまは拙著『スタートアップの知財戦略』もぜひご参考にしてみてください。


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