スバルは2020年度通期予想を上方修正、販売好調でも米国市場は楽観視できず:製造マネジメントニュース
SUBARU(スバル)は2020年11月4日、電話会見で2021年3月期第2四半期(2020年4〜9月期)の決算を発表した。
SUBARU(スバル)は2020年11月4日、電話会見で2021年3月期第2四半期(2020年4〜9月期)の決算を発表した。連結販売台数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で前年同期比27.9%減の36.3万台となった。売上収益は同24.1%減の1兆2184億円、営業利益は同67.7%減の306億円、当期利益が同65.3%減の237億円だった。
2020年4〜9月期の販売は、日本はモデル切り替えも重なり前年同期比37.4%減の4.3万台、北米は回復しているものの4〜6月期の販売減少が大きく同21.9%減の28.4万台、欧州が同59.6%減の7000台、中国は同21.3%増の1.3万台だった。
スバル 代表取締役社長の中村知美氏は「300億円の営業黒字を確保できて、山を1つ越えたかなというところ」と業績を評価した。諸経費の削減が貢献したが、リコール費用の減少も大きく影響した。「この6カ月間に大きなリコールがあれば、非常に厳しい決算になっていたのは間違いない。品質改革の取り組みを改めて加速させたい」(中村氏)としている。
リコール費用以外にも販売管理費や販売奨励金が減少した。また、東京都内の研究開発部門でのリモートワークの利用が活発で、実機が必須の場面以外では効率化が進んできたという。今後も取り組みを継続し、成果を群馬県の拠点にも広げたい考えだ。
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絶好調とは感じていない現地の肌感覚
2021年3月期通期は、売上収益が前期比11.8%減の2兆9500億円、営業利益が同47.7%減の1100億円、当期利益が同47.6%減の800億円を見込む。連結販売台数は同11.9%減の91.1万台を計画する。2020年8月に発表した通期見通しからは業績と販売台数の両方を上方修正している。
前回の予想から売上収益が500億円増、営業利益は売上構成差の改善などで300億円増、当期利益が200億円増となる。販売台数は、COVID-19の影響が出始めた前期の落ち込みをカバーすることもあり、1.1万台を上乗せした。
上方修正の要因は米国の販売が想定を上回って回復していることだ。今期の米国販売は、9月と10月を単月で見ると過去最高を記録した。しかし、中村氏は「現地ではこの販売が絶好調だとは感じていない」とコメントするなど慎重な姿勢だ。
米国の状況について中村氏は次のように語った。「州をまたいだ移動や飲食店の営業が制限されており、経済活動への制約は大きく、窮屈な生活だと聞いている。都市封鎖や暴動の影響はあまり懸念していないが、新車販売の本格的な回復は現時点ではまだ不透明だ。新車販売が回復しているのは、優良な顧客による支えや販売店のチームワークが要因だが、旅行や外食の制限を受けて白物家電やクルマが売れているという環境もある。マイカーでの移動も見直されている。ただ、現地の社員の肌感覚としては、これだけ感染者数が増えていく中で、クルマが売れて明るい状況だとはどうしても思えず慎重になっているようだ。日本で米国の販売を見ている感覚とは差がある。2021年の計画をどうするか、もうちょっと強く行けそうなのか、現地と話し合いながらこれから決めていく」(中村氏)。
航空宇宙事業は売上収益が前年同期比33.5%減の472億円、営業損益は30億円の赤字となり厳しい状況だ。2020年度下期は赤字幅が拡大すると見込む。同事業では構造改革を進める他、2020年度下期から自動車事業への配置転換や応援を一部で開始し、人員の余剰を解消させるとしている。
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