自動車業界で求められるITエンジニア人材とは:モノづくり業界転職トレンド(25)(2/2 ページ)
CASEやMaaSなど“つながる自動車”の新潮流で、自動車業界はいま、ITエンジニアの採用が盛んだ。自動車業界がいま求めているITエンジニア人材について、転職コンサルタントに話を聞いた。
幅広いITエンジニアにチャンス
では、具体的にどのような経験やスキルを持つ人が求められるのだろうか。
まずクラウドやサーバのエンジニアとして求められるのは、システム構築や運用のスキルだ。これは、ネットワークインフラ、Webシステム、IoT、パブリッククラウドなど、多くの分野で活用されているスキルなので、IT分野での仕事経験があれば、該当する方は比較的多いのではないだろうか。
しかしデータサイエンティストやセキュリティエンジニアは、あまり多くない。そのため各社とも、その分野で経験豊富な即戦力だけでなく、関連する知見や素養のある人も含めて採用している。
データサイエンティストでは、機械学習の実装に用いるPythonやRといった言語の経験者、 AIや機械学習に携わった経験のある人の他、IoTや自動化に関わるソフトウェア開発の経験者も対象とされる傾向がある。
セキュリティエンジニアについては、もっと対象範囲を広げていることが多い。セキュリティに関する知見を持っている人ばかりでなく、何らかのソフトウェア設計の経験がある人なら可能性がある。この職種は、さまざまな業界が必要としていて採用が難しいため、自社で育てることを前提に考えている企業もあるようだ。
総じて、比較的幅広いITエンジニアにチャンスがあると言えるだろう。
最先端分野に関わることができる
ITからITの転職経験を持つ方は多いと思うが、ITから製造業、特に自動車業界への転職はイメージしにくいのではないだろうか。ITエンジニアにとって、自動車業界への転職にはどのような魅力があるのだろう。
大熊氏は「相談に来られるITエンジニアは、新しい技術、革新的な技術に貪欲な方、スキルアップしたいと考えている方が多い。自動車業界に転職することで、新技術を身に付け、変化する自動車のインフラを支える存在として活躍できることは魅力だと思う」と話す。
また製造業のだいご味の一つである、「有形」のものに携わることができる。UIはあるものの、ITによって提供されるサービスは基本的には「無形」だ。自動車業界でも、データやセキュリティ自体は無形だが、自分が携わった仕組みによって、自動車の性能や機能が形作られているという世界を経験できる。これは、ITとは違うモチベーションになるのではないだろうか。
しかし気になるのは、自動車業界の状況だ。業績に関してあまりいい話は入ってこないが、将来性はどうなのだろう。
「現時点は確かに、コロナ禍の影響で足踏み感は否めない。ただ、ITエンジニア出身者が従事する領域は、世界的に注目されている最先端の技術分野に属する。CASE、MaaSに関連する研究開発投資は、今後も継続的に行われると考えられ、中長期的には明るい業界と言える」と大熊氏。
IT業界での経験が必要とされ、しかも最先端のコネクテッドカーに生かされる。自動車業界は、ITエンジニアの新たな活躍の場所になりそうだ。
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