今、半導体業界が求めている人材とは:モノづくり業界転職トレンド(21)(1/2 ページ)
コロナ禍で中途採用が厳しくなる中、エンジニアの求人はどこにあるのだろうか。転職市場の現状と、安定的に募集のある業界について転職コンサルタントに話を聞いた。
2020年5月末に発表された同年4月の有効求人倍率は、1.32倍。4カ月連続で前月を下回り、新規の求人は2019年の同時期より31.9%減少した。とんでもない事態になってしまったが、こんな状況でエンジニアの求人はどこにあるのだろうか。自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャー 関寺庸平氏に、転職市場の現状と、安定的に募集のある業界を聞いてみた。
製造業の採用は3割減
政府の月例経済報告では、景気の現状について「急速な悪化」と表現されたが、製造業の採用状況も厳しい。特に自動車関連、航空機関連では、採用をストップしたり、募集人数を減らしたりと、顕著に現れている。クイックのデータを基に2020年5月の求人件数を前年同月と比較すると、製造業全体で約3割減、なかでも自動車・自動車部品・輸送用機器は48%減、家電・AV機器・通信機器・OA機器は42%減。残念ながら、事態は深刻と言わざるを得ない。
以前の記事で「景気が落ち込んでも経営効率化は必要なので、コンサルティングファームは今年度の採用もある」という話をしたが、コンサルティングファームのお客さまである製造業が厳しいことから、比較的活況ではあるものの、影響がないとは言い切れない状況になっている。
一方で、募集数自体は少ないが、医療機器メーカーなど医療関連は比較的安定。電子部品や半導体関連の採用は、今のところ計画どおり、あるいは微減といった状況だ。
半導体業界が採用し続ける理由
半導体業界の採用は、なぜ比較的良い状態なのか。
半導体業界は、需給バランスの乱れによって一定の周期で景気が上下する(シリコンサイクル)と言われている。2019年は景気の底と見られたため、2020年は上昇が見込まれていたが、経済低迷の影響で業界の期待は裏切られた形となっている。
しかし、在宅勤務、巣ごもり生活によるインターネットを使ったゲームや動画など、仕事でも余暇でも通信負荷が高まっている。そのためデータセンター、通信網の整備などに伴い、通信系デバイス、メモリ、センサーなどの需要が増え、デバイスメーカー、半導体製造装置メーカーの受注は増えている。
その結果、コロナの影響による景気の悪化と、コロナの影響による受注増が相殺される形で、トントンという状況になり、深刻な他の製造業と比較すると、採用も良い状態をキープしているというわけだ。
この半導体業界の状況は、日本だけでなく、世界で見られている。そうなると、米中の対立も気になるところだが、対立によってこれまでの調達先が使えなくなれば、その分の受注が日本に流れてくる可能性がある、という見方があることも付け加えておく。
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