自動車業界で求められるITエンジニア人材とは:モノづくり業界転職トレンド(25)(1/2 ページ)
CASEやMaaSなど“つながる自動車”の新潮流で、自動車業界はいま、ITエンジニアの採用が盛んだ。自動車業界がいま求めているITエンジニア人材について、転職コンサルタントに話を聞いた。
いま自動車業界は、ITエンジニアの採用に動いている。自動車がつながることにより、必要になったIT分野のノウハウや技術を獲得したり、課題を解決したりするためだ。どのようなスキルや経験が求められるのか、ITエンジニアにとって自動車業界はどんな世界なのか、自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの大熊文人氏に聞いた。
IT人材が足りない
コロナ禍で厳しい状況の自動車業界だが、2020年7月以降は完成車メーカーの生産台数に回復が見られるようになってきた。対昨年比ではまだマイナスではあるものの、減少幅が月を追うごとに小さくなっているのだ。CASE、MaaSといった先端技術の研究開発投資も再開されているようだ。
採用については、まだ様子を見ている企業もあるが、主要メーカーを中心に動きが出始めている。大熊氏は「徐々にではあるが、採用も戻っていくのではないか」と話す。
このような自動車業界の採用状況の中で、いま、ITの知見や技術を持つ人材が求められている。「これまで自動車業界は、車の性能を高めるために、車に搭載する技術を追求してきた。そのためITに関するノウハウについては、まだ十分に持ち合わせていない。CASEという技術革新に伴ってITニーズが高まる一方、IT人材は足りないという現状がある」と大熊氏は説明する。
「コネクテッド」に関わる人材確保が急務
自動車業界が必要とするIT人材とは、どのような職種なのか。特に需要が高いのは、セキュリティエンジニア、クラウドやサーバのエンジニア、データサイエンティストの3職種だ。
セキュリティエンジニア、クラウドやサーバのエンジニアが必要とされる背景にあるのは、CASEの「C」、つまり「コネクテッド」である。車と車、車と外部のインフラなど、常にさまざまな通信が行われることで、自動運転に代表されるように、自動車はもっと便利に、安全に、快適になっていく。しかし同時に、サイバーセキュリティの強化や送受信トラブルへの対応なども必須だ。
また車載ソフトウェアが増えれば、ソフトウェアの更新が必要なケースも増えるはず。そこで、ソフトウェアの機能強化や不具合への対応などを、手間なく、迅速に行う手段として、無線通信でデータを送受信する技術「OTA」(Over-The-Air)にも注目が集まっている。
加えて、2020年6月、自動車のサイバーセキュリティとソフトウェアアップデートの国際基準が成立した。この国際基準は2021年1月から施行され、日本と欧州では、2022年7月以降に発売される新型車はこの基準を満たさなければならない。
このような状況から、セキュリティやサーバ、ネットワークインフラなどの経験を持つ人材の確保は急務となっている。多くのデータが送受信されるようになると、ビッグデータを扱うことができるデータサイエンティストも必要になってくるというわけだ。
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