ロータリーエンジン搭載車は2022年前半に、マツダ「マルチソリューション」始動:エコカー技術
マツダは2020年10月8日、新世代商品群の第3弾となるコンパクトSUV「MX-30」を日本向けに発売したと発表した。まずはマイルドハイブリッドモデルを販売し、2021年1月にEV(電気自動車)モデルを追加する。MX-30のEVモデルは当初、リースでの販売を予定していたが、一般ユーザーの関心の高まりを受けて販売方法を見直しているという。
マツダは2020年10月8日、新世代商品群の第3弾となるコンパクトSUV「MX-30」を日本向けに発売したと発表した。まずはマイルドハイブリッドモデルを販売し、2021年1月にEV(電気自動車)モデルを追加する(EVモデルは欧州では2020年9月から販売している)。MX-30のEVモデルは当初、リースでの販売を予定していたが、一般ユーザーの関心の高まりを受けて販売方法を見直しているという。
MX-30のマイルドハイブリッドモデルは、排気量2.0l(リットル)のガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」にマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「e-SKYACTIV G」の1種類のみ。既存モデルでは新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」にマイルドハイブリッドシステムを組み合わせて搭載しているが、「ブランドの幅を広げる上で、選んでもらいやすいことを重視」(マツダ MX-30主査の竹内都美子氏)して、MX-30はe-SKYACTIV Gを設定した。
税込みメーカー希望小売価格は2WDモデルが242万円、4WDモデルが265万6500円。WLTCモード燃費は2WDモデルで15.6km/l。日本国内での月間販売計画台数は1000台。コンパクトSUVの「CX-30」が3種類のパワートレインで月間販売計画台数を2500台であるため、「パワートレインが1種類のMX-30としては妥当な計画」(マツダ 代表取締役社長の丸本明氏)だとしている。
マルチソリューション戦略のけん引役に
マツダは、1つの車種に複数の電動パワートレインを設定するマルチソリューションを環境対応の戦略として掲げてきた。全ての地域に同じ電動パワートレインを展開するのではなく、その市場の充電インフラの普及状況やクリーン電源の比率、ユーザーの使い方に合わせて最適な電動パワートレインを投入するというものだ。MX-30はマルチソリューション戦略を実行に移すモデルとなる。
また、電動パワートレインのマルチソリューション戦略ではロータリーエンジンを活用することも以前から公表してきた。ロータリーエンジンに組み合わせるバッテリーや燃料タンクの容量、ジェネレーターの出力を変更することにより、レンジエクステンダー付きEVやプラグインハイブリッドシステム、シリーズハイブリッドシステムをそろえる。一括企画でロータリーエンジンを使った電動パワートレインの開発が進められており、丸本氏は「2022年前半から市場に導入予定だ」と明言した。各国で強化されるCO2排出規制にはEVだけで対応するのではなく、既存のパワートレインの改善やマイルドハイブリッドの展開、CO2排出量が多いモデルの売り方の見直しなど、さまざまな側面から取り組んでいく考えだ。
e-SKYACTIV Gのマイルドハイブリッドシステムは、最高出力5.1kW、最大トルク49Nmのモーターと、リチウムイオン電池を組み合わせる。摩擦ブレーキとエネルギー回生の両方の制動力を協調させた回生協調ブレーキ、減速してから停止するまでの間のエンジン停止領域の拡大、より多くの減速エネルギーを回生できる大容量バッテリーによって燃費を改善する。エネルギー収支を計算しながら、走行中に必要な電力の供給やアイドリングストップ時間の延長、加速のアシストによるエンジン負荷の軽減など、優先順位をつけてエネルギーマネジメントを行う。
エコで質感の高い素材を多用
MX-30のデザインは、これまでの「魂動デザイン」の表現に広がりを持たせることを狙った。「要素をそぎ落とすことの美しさ」という考えに基づいてクルマが塊として印象に残ることを意識し、シンプルな立体構成のエクステリアとした。ボディーカラーは、ルーフまで同色のタイプと、ボディーとルーフサイド、ルーフで3トーンのタイプを用意している。
センターピラーがない観音開きの「フリースタイルドア」もデザイン面での特徴となる。専用設計のヒンジによって、フロントドアは82度、リアドアは80度まで大きく開く。乗り降りや荷物の積み下ろしのしやすさだけでなく、開放感も訴求する。同様のドアを採用していた「RX-8」では、シートベルトの下側を後席フロア側に取り付けていたが、MX-30ではリアドアに取り付けている。
また、親しみやすさや温かみを感じるデザインにもこだわった。環境を意識した素材でありながら、風合いや質感、手触りを追求。自然体でありながら高い充実感が得られる素材の開発をモダンさの表現の軸とした。
コンソールトレーやドアグリップの素材「ヘリテージコルク」には、コルク栓を生産した端材を採用。樹脂との一体成形や専用のコーティングなどによって自動車部品としての耐久性も持たせた。ドアトリムのアッパー部分には、空気を含んだような風合いになる「呼吸感素材」を取り入れた。繊維にはペットボトルのリサイクル原料を使用し、樹脂素材との一体成形によって、風合いの高さと形状を両立する。
一部のシートには、リサイクル糸を20%使用したシートファブリックを採用。従来よりも高いレベルのリサイクル糸使用率とした。人工皮革は、ビンテージレザー柄をプリントし、皮膜の厚さを緻密にコントロールしたシリコンコートを施すことで、素材の奥行き感と手触りの心地よさを実現した。
MX-30のボディーサイズは全長4395×全幅1795×全高1550mm、ホイールベースが2655mmで、全高が10mm高い以外はCX-30と同じだ。車両重量は、MX-30が1460〜1520kgなのに対しCX-30がガソリンエンジンモデルで1380〜1480kg、SKYACTIV-X搭載モデルで1490〜1550kgだ。WLTCモード燃費で比べるとMX-30が15.1〜15.6km/lだが、CX-30のガソリンエンジンモデルが14.8〜16.2km/l、SKYACTIV-X搭載モデルが15.8〜17.0km/lとなる。
価格はCX-30のガソリンエンジンモデルが239万2500〜303万500円、SKYACTIV-X搭載モデルが329万4500円からとなる。MX-30は、デザインや価格でユーザーを広げる役割を担うクルマといえる。
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