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公差で逃げるな、マツダ「SKYACTIV-X」がこだわる精度と品質エコカー技術(1/3 ページ)

マツダが新開発のSKYACTIV-Xにおいて重視したのは、部品の高精度な加工によって誤差の許容範囲を狭めたばらつきのないエンジン生産と、SPCCI(火花点火制御式圧縮着火)の機能の品質を、エンジンを組み上げた状態で抜き取りではなく全数で保証する評価技術だ。SKYACTIV-Xの生産ラインの取り組みを紹介する。

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 「公差は逃げだ。よりよい性能を量産するなら、生産と設計が一緒になって公差以上のど真ん中を狙うべきだ。狙いが外れても、なぜそうなるか詰めていけばど真ん中に近づける」(マツダ 常務執行役員 グローバル生産・グローバル物流・コスト革新担当の向井武司氏)


マツダの新型ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」(クリックして拡大)

 マツダの新型ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を搭載した「マツダ3」がいよいよ日本でも発売になった。「CX-30」のSKYACTIV-X搭載グレードも、2020年1月以降に販売を開始する予定だ。当初、日本ではレギュラーガソリン仕様で発売する計画だったが、ハイオク専用の欧州仕様が走行性能が好評だったこともあり、日本向けも仕様を変更。圧縮比もチューニングし直した。これにより発生した認証手続きで計画よりも2カ月遅れた。

 SKYACTIV-Xは、ガソリンの圧縮着火による燃焼でリーンバーン(希薄燃焼)を実現した「世界初」(マツダ)のエンジンだ。ガソリンエンジンの出力性能と、ディーゼルエンジンの燃費、トルクを両立したという。マツダが目指す内燃機関の理想の燃焼に向けた第2ステップがSKYACTIV-Xだ。理想の燃焼に近づけるポイントは、圧縮比と比熱比を高めたことによる熱効率の向上だ。

 マツダが新開発のSKYACTIV-Xにおいて重視したのは、部品の高精度な加工によって誤差の許容範囲を狭めたばらつきのないエンジン生産と、SPCCI(火花点火制御式圧縮着火)の機能の品質を、エンジンを組み上げた状態で抜き取りではなく全数で保証する評価技術だ。SKYACTIV-Xの生産ラインの取り組みを紹介する。

3世代のエンジンを混流生産

 SKYACTIV-Xを生産するのはマツダ本社工場のELラインだ。これは、2002年に「アテンザ」の初代モデル向けに立ち上げたラインで、2014年にガソリンエンジン「SKYACTIV-G」の並行生産を開始。さらに、2019年からSKYACTIV-Xも含めた混流生産となり、3世代のエンジンが流れている。

 エンジンの構造は世代が新しくなるにつれて複雑さが増し、組み立てにかかる時間も違う。例えば、SKYACTIV-Gとアテンザ向けエンジンは17分差、SKYACTIV-GとSKYACTIV-Xは29分差となっており、SKYACTIV-Xに最も作業時間を要する。ELラインでは、必要最小限の追加で3世代のエンジンを作り分けるため、SKYACTIV-Xだけが分岐するバイパス工程を複数箇所で設けた。これにより、メインラインでの作業時間がほぼ同じになるように調整した。


写真右がSKYACTIV-G、写真左がSKYACTIV-X。混流生産となっている(クリックして拡大)

 3世代分のエンジンが流れるが、作業者の負担は低減されている。部品は流れてくるエンジンの機種に合わせてキットで供給されるため、作業者は目の前の箱から部品を取って組み付けることに集中できる。エンジンを流すパレット側にもIDが付与されており、ラインでIDを読み取るとナットを締めるナットランナーの設定が自動で変更される。必要なトルクやナットの本数がエンジンの機種に合わせて切り替わるため、作業者が混流生産の中で間違えないようにナットランナー側で必要な本数のナットを規定のトルクで締めたか管理できる。

 SKYACTIV-Xの組み立てでは、正しいトルクでスパークプラグを締めることで燃焼室内での電極の向きがそろうようにしている。電極の向きは混合器の流れに影響するためだ。SKYACTIV-Gでは電極の向きまではそろえていない。

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