エンジンとステアリングが連携すると、運転が上手く感じるクルマになる:人とくるまのテクノロジー展2016
マツダは「人とくるまのテクノロジー展2016」において、エンジン制御によってカーブや車線変更での車両の荷重移動を最適化する技術「G−ベクタリング コントロール」を発表した。エンジンとステアリングの連携のみで構成する低コストな機能で、車格を問わず搭載可能。2016年内にも搭載車種が投入される見通しだ。
マツダは「人とくるまのテクノロジー展2016」(2016年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において、エンジン制御によってカーブや車線変更での車両の荷重移動を最適化する技術「G−ベクタリング コントロール」を発表した。エンジンとステアリングの連携のみで構成する低コストな機能で、小型の「デミオ」から大型の「CX-9」まで幅広い車格に対応し、ガソリンエンジン車でもディーゼルエンジン車でも搭載可能だという。「2016年内にも搭載車種を投入できる。モデルチェンジに限らず一部改良も搭載の機会になるだろう。オプション扱いではなく全車標準で、グローバルで搭載する」(マツダの説明員)としている。
カーブを曲がるのが上手くなる?!
G−ベクタリング コントロールは、カーブの手前でアクセルを抜いたりブレーキを踏んだりして安定して曲がれるようにするドライバーの動作を、クルマ側でよりきめ細かく制御して実現するというもの。
具体的には、ステアリングの操作を受けてエンジンのトルクを落とし、前輪に荷重をかけることでタイヤを適切に接地させることで、操舵に対する応答性を向上する。前荷重によってタイヤがグリップ性能を発揮しやすくなり、カーブや車線変更の時に意図通りのラインでクルマを走らせることが可能になる他、操舵の修正を低減できるためドライバーの疲労軽減に貢献する。
エンジンのトルク低減は、速度やステアリングの角度などによって最適な前荷重となるように燃料噴射量などを調整して行う。
前荷重でカーブに進入することにより、通常の運転では横方向にのみ発生していた加速度(G)が、斜め後ろに向かって掛かるようになる。この結果、乗員がカーブで横に揺さぶられにくくなり、快適な乗り心地にもつながるとしている。カーブや車線変更だけでなく、雪道やアイスバーンなどでも操縦安定性が向上する。
同技術は人間が運転しやすい車両特性を実現する「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」の第1弾と位置付ける。“人馬一体”の走りのため、減速/旋回/加速といった車両運動で「滑らかなGのつながり」(マツダ)を追求していく。
G−ベクタリング コントロールが作動しても、人間は気付けない
“人馬一体”の走りとする上でドライバーや乗員に違和感がないよう、前輪への荷重のかかり方や、作動するまでの応答時間の短さに配慮した。
G−ベクタリング コントロールによって前荷重となる時に発生するのは0.05G以下で「最新鋭の高速エレベーターで発生するGと同程度。テスト走行では0.001〜0.01Gだったので、前に沈み込む感じは気付けないだろう」(同社の説明員)という。
また、作動するまでにかかる時間は、ステアリングを操作してから0.05秒以下。「人間がまばたきしている間に3〜4回は作動できるイメージ」(同社の説明員)だ。
カーブを曲がりながらドライバーが意図するラインに乗った後は、即座にエンジンのトルクを復元して後荷重になるため、安定して直進するという。
同技術が可能になったのは、「きれいに燃焼するよう、SKYACTIVエンジンを緻密に作ってきたのが大きい。だからこそ、0.05Gを発生させるようなわずかなトルクの調整も可能になった。この自然な制御は、他社は簡単にはまねできないだろう」(同社の説明員)。
ハイブリッド車でも不可能ではないが
G−ベクタリング コントロールはSKYACTIVエンジンとの組み合わせで開発が進められており、ハイブリッドモデルでの搭載はエンジン車よりも遅れる形となりそうだ。しかし、必要な荷重移動ができるようトルクを制御できれば、ハイブリッド車でG−ベクタリング コントロールを搭載するのも不可能ではないという。
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