ファナック、富士通、NTT Comの3社、工作機械業界のDXを加速させる新会社設立:FAニュース(2/2 ページ)
富士通とファナック、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の3社は2020年10月7日、工作機械業界をはじめとした製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)用のクラウドサービスを提供する新会社「DUCNET(ディーユーシーネット)」を2020年11月に設立すると発表した。
「デジタルユーティリティクラウド」における3社の役割
3社の役割としては、富士通が「COLMINA」開発などで得た知見を生かしたアプリケーションレイヤーを担当する。NTT Comは安全なデータ利活用を実現するためのICT基盤やセキュリティ機能を担当する。ファナックは工作機械業界側に立ち、ファーストユーザーとしての立場で参画し、工作機械に必要な機能の企画などを行う。
ファナック 取締役副社長 執行役員 兼 CISOの齊藤裕氏は「ファナックは基本的には製品を売るプロダクトビジネスで成長してきた企業だが、多くの産業でサービスビジネス化が広がる中で、こうした流れに対応する必要が出てきた。しかし、ファナック1社ではこうした動きは難しい。そこで『デジタルユーティリティクラウド』を通じてファナック自身のDXを進め、その知見をさらに工作機械メーカーに展開するという流れを作ることを考えた」と語っている。
ファナックが最初のステップとして活用を検討しているのは、eコマース事業に当たるストアの部分と、シェアードサービス事業に当たるデータ共有の部分だという。
当面の参加企業は工作機械メーカーを想定しているという。「工作機械メーカーがデジタルビジネスの展開を進めるのをサポートするために使う基盤」という位置付けである。その中でまず2021年4月に日本国内で基本サービスを開始し「3年以内に参加企業数300社を目指す。また、参加企業同士のつながりを活性化していく」と田中氏は述べる。工作機械業界である程度の成果を生み出せた段階でその他の業界にも進出する。また、2021年度から順次、欧州、北米、アジアに展開予定だとしている。
富士通やNTT Comでは、以前からも製造業向けのDX関連のシステム提案などを行ってきたが、それらとDUCNETとの違いについては「従来は個社ごとにシステムインテグレーションとして提供してきた。それは各顧客の強みを生かすという発想によるものだったが、DUCNETはこの発想を思い切って転換し、各顧客で共通の機能を『協調領域』と位置付けてしまい、共有基盤として展開してはどうかというものだ。『協調領域』については、投資を抑えて共通のモノを使い、固有の発展につながるものに投資を回すという考えである。それぞれを各企業の状況によって組み合わせて提案していく」と田中氏は位置付けの違いについて語る。
そのため、価格も抑えた形になるという。「具体的な価格は現在検討中の段階だが、例えば、10人程度でデータ共有をする場合、機械設備がそれほど多くなければ、月で数万円レベルという価格感で提供する。大手はもちろんだが中堅中小などの規模でも幅広く使えるようにする」(田中氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工作機械業界共通のデジタル基盤構築へ、ファナック、富士通、NTT Comが共同開発
ファナック、富士通、NTTコミュニケーションズの3社は2019年9月12日、工作機械業界の社内業務の効率化やサービスの高度化を実現するデジタル基盤として「デジタルユーティリティクラウド」を3社で共同開発することを発表した。 - 工作機械も4.0へ、シェフラーとDMG森精機が描く「マシンツール4.0」
ドイツのインダストリー4.0が大きな注目を集める中、工作機械にもIoTを積極的に活用する動きが出てきている。軸受部品を展開するシェフラーと、工作機械メーカーのDMG森精機は工作機械のインダストリー4.0対応を目指す「マシンツール4.0」プロジェクトを推進している。 - 製造業がDXを進める前に考えるべき前提条件と3つの戦略
製造業にとっても重要になる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に注目が集まっている。本連載では、このDXに製造業がどのように取り組めばよいか、その戦略について分かりやすく紹介する。第1回の今回は、DXを進める中で必要になる前提条件と3つの戦略の概要について紹介する。 - いまさら聞けない「製造業のDX」
デジタル技術の進歩により現在大きな注目を集めている「DX」。このDXがどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。 - 製造業が「DX」を推進するための3つのステージ、そのポイントとは?
製造業のデジタル変革(DX)への取り組みが広がりを見せる中、実際に成果を生み出している企業は一部だ。日本の製造業がDXに取り組む中での課題は何なのだろうか。製造業のDXに幅広く携わり、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)のエバンジェリストを務める他2019年12月には著書「デジタルファースト・ソサエティ」を出版した東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター 参事の福本勲氏に話を聞いた。 - データを世界の共通言語に、リアルタイムで製品収益を見える化する安川電機のDX
「データを世界の共通言語に」をスローガンとし「YDX(YASKAWA digital transformation)」として独自のデジタル変革(DX)を進めているのが、産業用ロボットやモーターなどメカトロニクスの大手企業である安川電機である。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に「YDX」の狙いについて話を聞いた。