富士通は「フジトラ」でDXを断行、「One Fujitsuプログラム」による標準化も:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
富士通は2020年10月5日、同社が全社的に取り組むDXプロジェクト「フジトラ」の全体概要を紹介するオンライン説明会を開催した。プロジェクトの一環として経営、業務プロセスの標準化を通じて、データドリブン経営を加速する「One Fujitsuプログラム」などを順次展開する予定。
ITではなく経営主導でのDXプロジェクト推進
また富士通は、フジトラの具体的な施策として「One Fujitsuプログラム」の展開も発表した。ITを活用し、富士通グループ全体で「戦略」「組織」「制度ルール」「データ」「業務プロセス」「アプリケーション」「インフラ」の7点を標準化するという計画だ。これによって、1機能1システムを実現するとともに、標準化されたデータで「富士通のデジタルツイン」を作成することで、データドリブン型経営への全社的なシフトを目指す。
標準化はERP(基幹業務)領域のITシステム導入からはじめ、富士通グループ全体にグローバルに展開する予定。この際の進め方として、福田氏は「グローバル・シングルERP」方式を採用すると説明する。
福田氏によると、国内企業が経営や業務の標準化をITで推進する場合、共通の設計図に基づき作成したITシステムをグローバルに展開する「テンプレート方式」が現在主流となっている。しかし、この方法では、現地の要求に適合するようにITシステムが修正された上で導入されることになってしまう。これでは、世界各所に似て非なるITシステムが広まり、標準化が余計に困難になりかねない。また、経営層やビジネス部門が参画、支援のレベルでしか関与しないため、経営プロジェクトというよりはITプロジェクトとしての性格が色濃くなる。
これに対して、グローバル・シングルERPは、国内の富士通グループはもちろん、海外リージョンも含めて、全社が主体的に参加する形でITシステムの標準設計を行うという方式だ。これによって、ITプロジェクトとしてではなく、経営プロジェクトとして、経営層が主導し、ビジネス部門が主体的に取り組む形での標準化が行えるようになる。「グローバル・シングルERPを実現する難易度は極めて高い。ただ、このように経営、業務、ITの三位一体で経営プロジェクトを行うことが『One Fujitsu』の基本的な考え方となる」(福田氏)。
また、One Fujitsuプログラムを円滑に進行するために、データや業務プロセスのグローバル標準設計と維持運営を行う役職/組織として「DPO(データ&プロセス・オーナー)」をCEO直下の組織として設置する。これに加えて、2020年6月に富士通と戦略的提携を締結した、ビッグデータ分析企業Palantirのデータ分析プラットフォームも活用するとしている。
また、福田氏は従業員や顧客の意見を収集するための、全社員参加型のプロジェクト「VOICEプログラム」を紹介した。特定テーマに関する意見を収集して、業務データなどと組み合わせることで、課題発見などのインサイトを獲得するために用いる。回答時に従業員の所属や属性なども併せて収集されるため、データ集計の手間も省力化する。
既にVOICEプログラムは、新型コロナ感染症(COVID-19)によるリモートワークの業務への影響や働き方、生産性を従業員に尋ね、その回答を収集、分析するために使用されている。福田氏は、収集した意見を基に、リモートワーク支援の制度検討などの具体的な施策につなげられたと説明する。
富士通のDXの各種取り組みについて、福田氏は「DXO間の会話を聞いていると、現場の課題はもちろん、その解決策までしっかりと把握していることが多いように思う。問題は解決策がなぜ実行されにくいかということで、原因の根幹は組織のカルチャー面にあると思っている。常に変革を求めるカルチャーが富士通に根付き、DXプロジェクト自体が不要になったとき。それが当社のDXプロジェクトの終わりになるだろう」と語った。
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