黒や光沢でも高精度で認識する光電センサー、3倍の精度で調整時間は2分の1に:FAニュース
オムロンは2020年9月30日、検出能力を向上した、CMOSレーザーセンサー「E3AS-HL」を2020年10月1日からグローバルで発売すると発表した。従来検出困難であった対象物の安定検出を実現することで、設備立ち上げ時の調整時間の短縮などに貢献する。
オムロンは2020年9月30日、検出能力を向上した、CMOSレーザーセンサー「E3AS-HL」を2020年10月1日からグローバルで発売すると発表した。従来検出困難であった対象物の安定検出を実現することで、設備立ち上げ時の調整時間の短縮などに貢献する。
1秒間に1万回サンプリングしアルゴリズムで増幅
光電センサーは、投光器と受光器が分かれた「透過型」と、光をミラーで反射してセンサーで受け取る「回帰反射型」、物体そのものの反射を利用し投受光を一体で行う「反射型」の主に3つの種類がある。「透過型」と「回帰反射型」は測定対象物を挟んで両側に投光器と受光器、もしくはミラーを設置する必要があるため、設置の効率だけを考えると「反射型」の方が優れているが、「反射型」は黒いモノや複雑な形状のモノ、光沢のあるモノでは必要な光量を得ることができず認識精度が課題となっていた。
新製品の「E3AS-HL」は、この「反射型」の弱点でもあった検出精度を独自技術で高めることで、光電センサーの設置効率を大幅に高めたことが特徴である。
具体的には新たに2つの技術を盛り込んだ。1つ目は、独自の検出アルゴリズムである。CMOSレーザーセンサーにより、毎秒1万回のデータをサンプリングし、独自積算処理のセンシングアルゴリズムにより増幅することで、少ない光量でも検出することが可能となった。2つ目が、CMOSレーザーの生産品質の向上である。センサー内の受光レンズ位置をμm単位の高精度で調整する製造技術を確立したことで、検出対象物の色、材質、形状の特徴を問わない高い検出安定性を実現した。
これらを組み合わせることで、曲面・凹凸形状や光沢のある自動車部品、多種多様な色柄や光沢のある食品、パッケージなどでも安定検出を行うことができるようになる。
また、検出対象物からの微小な反射光を検出できることで、広い角度範囲での取り付けが可能となる他、反射ミラーなどが不要で、高度化・複雑化する設備の設計を簡略化できる。缶やペットボトルなどを扱う飲料品工場では多列搬送ラインが活用されているが、多列化が進むと反射ミラーの設置スペースが確保できない場合も多い。こうした領域でも光電センサーが使用でき、使用可能領域の拡大が期待できるとしている。
「従来と比べて距離の位置誤差精度は、3〜4倍に高めることができた。また、設置の負担も1カ所につき2つの機器設置が必要な『透過型』『回帰反射型』に比べると半減できる。さらに、設置後の調整についても、2分の1や3分の1に低減できる。実際に先行的な導入では従来は20〜30分かかっていた調整が数分で済んだ事例もある」(オムロン)としている。
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