NVIDIAによるArm買収、フアンCEOは「顧客や関連業界に多大な利益」と強調:組み込み開発ニュース
NVIDIAとソフトバンクグループ(SBG)は、半導体IPベンダー大手のArmについて、NVIDIAがSBGとソフトバンク・ビジョン・ファンドから約400億米ドル(約4兆2400億円)で買収することで最終合意したと発表した。
NVIDIAとソフトバンクグループ(以下、SBG)は2020年9月13日(現地時間)、半導体IPベンダー大手のArmについて、NVIDIAがSBGとソフトバンク・ビジョン・ファンドから約400億米ドル(約4兆2400億円)で買収することで最終合意したと発表した。同買収は、英国、中国、EU、米国など各国規制当局の承認を得る必要があるため、取引完了は18カ月後の2021年12月になる見込みだ。
合意した取引内容では、NVIDIAは取引完了時に合計120億米ドルの現金(最終契約締結時に支払われる20億米ドルを含む)と、215億米ドル相当のNVIDIA普通株式をSBGとソフトバンク・ビジョン・ファンドに対価として支払う。支払いに用いられるNVIDIAの株式数は4430万株に上る。また、NVIDIAとSBG、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、Armが一定の業績目標を達成することを条件に、最大50億米ドルの現金もしくは普通株式(1株当たりの価格は同額)を受け取るアーンアウト条項でも合意している。
SBGとソフトバンク・ビジョン・ファンドは、今回の取引によってNVIDIA株式を10%以下保有する予定。これにより、今後のArmの長期にわたる成功に引き続きコミットするという。なお、今回の買収では、SBG傘下への移行が提案されていたArmのISG(IoT Service Group)は含まれていない。
Armの本拠ケンブリッジにAIスーパーコンピュータを構築
NVIDIA 創業者兼CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は「NVIDIAのAI(人工知能)コンピューティングとArmのCPUを取り巻く広大なエコシステムの融合により、クラウドやスマートフォン、PC、自動運転車、ロボティクスをエッジIoT(モノのインターネット)へと進化させることが可能になり、AIコンピューティングを世界の隅々まで届けられる」と強調。NVIDIAとArmだけでなく、顧客や関連する業界に多大な利益がもたらされること、ArmのエコシステムにとってはArmの研究開発能力が増強されること、NVIDIAのGPUおよびAI技術によってArmのIPポートフォリオが拡大することを訴えた。
NVIDIAは、Armの本拠地を従来と変わらず英国のケンブリッジに据え置く方針で、さらなる拡張によって世界レベルのAI研究施設を立ち上げ、ヘルスケア、ライフサイエンス、ロボティクス、自動運転車などの開発支援を行う方針である。加えて、ArmのCPU、NVIDIAのGPU、NVIDIAが買収したMellanoxのネットワーク技術を集積した最先端のAIスーパーコンピュータを構築することにより「ワールドクラスのテクノロジーセンターになる」(フアン氏)としている。
2020年6月にスーパーコンピュータ性能ランキング「TOP500」で1位を獲得した日本のスーパーコンピュータ「富岳」は、Armのアーキテクチャを採用していることで知られている。NVIDIAもスーパーコンピュータ分野への事業展開を強化しており、同社の「Selene」はTOP500で7位に入った。また、2020年5月に発表した新アーキテクチャ「Ampere」は、さまざまな分野のAI処理で高性能を発揮するとしている。
Arm CEOのサイモン・シガース(Simon Segars)氏は「当社経営陣と私は、次章を一緒に描くことができるNVIDIAと合流することをうれしく思う」と述べており、買収後も引き続きArmの経営を担う見込みである。
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謎のAI半導体メーカーではないようです。