人間の行動に合わせて機械が動作支援するための有用な手掛かりを発見:医療機器ニュース
東京大学先端科学技術研究センターは、人間と機械の協調システムにおいて生じる、人間の意図と機械の動作のずれを防止するための有用な手掛かりを発見した。
東京大学先端科学技術研究センターは2020年8月13日、人間と機械の協調システムにおいて生じる、人間の意図と機械の動作のずれを防止するための有用な手掛かりを発見したと発表した。同センターと東京大学大学院、東京工業大学の共同研究による成果だ。
パワーアシスト装置など、人間と機械が協調して目的の動作ができるように設計されたシステムでは、利用者が機械に「動かされた」と感じることがないよう、自発的運動と外部操作運動のタイミングを利用者の知覚と一致させる「知覚的同意性」を保持することが重要になる。
研究グループは、この知覚的同時性を計測する実験系を、腕(上腕二頭筋)を対象に構築した。被験者の腕に設置した筋電位計が、運動する直前の上腕二頭筋の筋収縮を検出した際に、任意の待機時間を経て外部から筋電気刺激を与える増幅運動システムだ。
自発的運動の開始から機械が運動を支援する(外部操作)までの待機時間を変えて、被験者の知覚同意性を確認したところ、検出から操作までの時間が80〜160ミリ秒の場合に、「同時」と感じた人が多かった。
研究グループは、人の知覚の順応についても検討した。視覚と聴覚など異なる2つの感覚に対して、時間をずらして刺激し続けると、「時間的再較正現象」により、同じタイミングで刺激を受けているように感じる(時間差に順応する)という。この現象を応用することで、知覚的同時性が保持しやすくなる可能性がある。
この実験では、検出―操作時間を50または150ミリ秒に固定した筋電位刺激(順応刺激)とランダムに変えた刺激を交互に用いた。その結果、50ミリ秒で設定した順応刺激では、150ミリ秒と比べて、自発運動と外部操作運動が同時だと知覚するまでの検出―操作時間が有意に早くなることが分かった。これにより、順応させる条件によって知覚的同時性が保持できる検出―操作時間が変化すること、知覚的同時性の保持に知覚の順応が応用できることが示された。
今後、研究グループは、機械と協調し続けることで人間の知覚がどのように変化するかについて、さらに研究を進める。そしてその成果を、外部から運動の補助をする場合の、人の認知メカニズムの解明や、利用者の運動を妨害しない人間機械協調システムなどに広く活用していく。
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