デジタルディーラーやダイナミックマップがカギ、“ポストコロナ”の勝ち残り:モビリティサービス(3/3 ページ)
人とモノの移動、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)をキーワードに、各国のモビリティエキスパートとともにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響と見通しを解説した第1回、第2回に続き、今回は「自動車業界編」として、大変革×COVID-19を勝ち残るための取り組みにフォーカスし、ポストCOVID-19時代のトレンド「Beyond CASE」を解説した。
人とモノ、それぞれのMaaSの違いとは
第3部ではAdvanced Manufacturing & Mobilityシニアマネージャー宮崎智也氏と同 シニアコンサルタントの中野広美氏が「ダイナミックマップの活用を通じた移動課題解決と新たな“金脈”」をテーマにセッションを行った。
「気付かないほど大量にある情報を別のことに活用する」という課題が、現在の自動車業界をはじめ、物流や交通事業者、行政などで指摘されている。例えば自動車業界では収集した走行データの活用方法や、交通・物流事業者では、物流クライシスや地方の路線バスの維持などでの最適化、行政の観点からは持続可能な都市交通、物流整備の観点から経済活性化の視点への政策シフトなどで、課題は把握できているものの具体的な取り組みがまだ行われていない状況だ。
これを解決できる手段としてダイナミックマップを介して情報を連携、活用して新たな事業機会を創出するというのが期待されている。このうち人流のMaaSについてはその「都市経済活性化を支える交通サービス」という概念が浸透しつつある。一方、物流MaaSについては人流MaaSと扱う情報が異なり、倉庫などの物流アセットや積荷情報を、地図上で可視化することが求められている。
物流MaaSの概念は「より少ないドライバーと車両で物流を支える。可能な限り少ない走行距離で、安全に適正運賃で運ぶ、社会コストを最小化できるようなドライバーの働きやすさ、CO2の排出量の削減など、社会コスト最小化できるような輸送手段が社会実装できている」などの定義がある。
実現のイメージとしては、移動の最適化とともに情報が集まってくるなどの側面がある。最近ではパケット輸送、フィジカルインターネットと呼ばれる物流の施設が制約されることなく、共同利用して最適にモノを運ぶという概念が生まれ、グローバルで推進されつつある。連携する情報では倉庫情報、港湾情報、ドライバー情報、荷物情報、トラック情報などがあり、トラック情報には位置情報、運べるものの種類などが含まれる。これらを地図上にまとめて掲載し、リアルタイムに有機的に連携するというのが物流MaaSの1つの姿となる。
物流領域では物流クライシスへの対応策の1つとして、配送経路の最適化が挙げられる。各国、異なる背景やニーズにより物流MaaSの取り組みとして推進されるが、ここで蓄積されていく情報は物流領域以外のさまざまな課題解決を可能にする。単発事業では規模は大きくないが組み合わせによる事業化を探索することが重要となる。
大都市から地方に基盤を移すには
ダイナミックマップはWithコロナ時代の社会づくりに寄与することが期待される。パンデミックリスク低減のために地方分散がクローズアップされているが、そこでは災害やパンデミックに強い地方都市づくりが求められる。これを支えるのが地産地消の進展だが、現状では地方での流通ネットワークが十分に整備されているとはいえない。
例えば野菜の流通経路は「大量に生産し大量に運び、売る」という広域流通体系になっており、小ロット多頻度の輸送手段が確立には程遠い状態だ。生産者は独自の物流ネットワークを持っていないため、宅配業者を利用するのが一般的であり、フンフラ不足・人手不足が深刻な地方では流通コストが都市でのコストと比較してもはるかに高くなる。
ダイナミックマップを活用し、各社の保有情報を地図上に付与することで、複数企業間で物流をシェアするネットワークを構築し、地方分散、地産地消を支える物流網を形成することができる。中野氏は「最初から必要な情報を全てはなくても、各社が許容できる範囲で情報を共有し小さな効果を積み重ねることから前に進めることが大事だ」とネットワーク整備のための手法について述べた。
これらのように複数事業者が地図情報として有機的な連携させることでより価値が生まれる。ダイナミックマップを「ビジネス連携プラットフォーム」として捉えて、蓄積された情報によりどのような社会課題が解決できるかを考えることが、リーチ可能な事業機会を特定する第一歩となる。単発事業ではなく複数事業の組み合わせとして捉えていくことにより収益化が可能となる。
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