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小型GPUで高精度AIを動かすには? 運転支援デバイス開発に挑む気鋭ベンチャーモノづくりスタートアップ開発物語(3)(3/4 ページ)

モノづくり施設「DMM.make AKIBA」を活用したモノづくりスタートアップの開発秘話をお送りする本連載。第3回はAIを使った運転支援デバイスを開発しているPyreneeを紹介する。「見た目はかっこいい」HUD型のデバイス設計や、実用に耐え得る運転支援用のAI開発に取り組む同社だったが、思わぬ苦労が待ち受ける。

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HUDは「かっこいい」! けど……

―― 設立後、事業展開は順調に進んだのでしょうか。

三野氏 2016年の秋ごろには、現在のPyrenee Driveにつながるモックアップが出来上がりました。HUD(ヘッドアップディスプレイ)型で、画像を透明のディスプレイに映し出すというデバイスです。ただ……結論を言うと、これは失敗でした。

 見た目は格好いいのですが、実際に運転席に取り付けると、天然光の影響で画面が見えにくくなる。また、HUDは構造上、画面が多少ゆがんだ状態で情報が表示されるので、見ていると気持ち悪くなってしまう。運転中に使うのには適していないですよね。操作する際にどうしてもリモコンが必要になるという問題もあり、これは駄目だと断念しました。

2016年秋に完成したモックアップ[クリックして拡大]出典:Pyrenee
2016年秋に完成したモックアップ[クリックして拡大]出典:Pyrenee

――それで現状の液晶ディスプレイ型になったのですね。

三野氏 情報を表示するハードウェアはそれで決着が着いたのですが、次は実用に耐え得る事故防止機能をいかに開発するか、というところが問題になりました。

 ここは本当に大変でした。当初は物体認識と行動予測を、AIを使わないアルゴリズムで処理しようと考え、実証実験を行っていました。しかし、実際に計測したデータを見てみると、とても実用化できないレベルの精度しか出なかった。当時は「Pyrenee Driveをリリースしたら、ゆくゆくは機能改善を施して、2世代目か3世代目からAIを組み込んだ機種も開発したい」などと思っていたのですが、現実を目の当たりにして「精度を出すには最初からAI搭載にしないと駄目なんだな」と思い直しました。

――三野さん自身はAIには詳しかったのですか。

三野氏 全く詳しくありませんでしたが、ラッキーな出会いがありました。当時、事務所を置いていた「DMM.make AKIBA」の1周年記念パーティーで、世の中でAIが注目され始める前からAI開発に取り組んでいたという、素晴らしいエンジニアと出会い意気投合したのです。当時、彼は別の会社に在籍していて、そちらで仕事を続けながら技術の支援をしてくれていたのですが、2017年初めに在籍していた会社を辞めて完全にジョインしてくれました。それが、今、当社のCTO(最高技術責任者)を務めている水野剛です。現在、水野にはPyrenee Driveに搭載するAIの設計や、社外の技術協力会社との開発を取り仕切ってもらっています。

DMM.make AKIBAで出会い、CTOに就いた水野氏(左)と三野氏[クリックして拡大]出典:Pyrenee
DMM.make AKIBAで出会い、CTOに就いた水野剛氏(左)と三野氏[クリックして拡大]出典:Pyrenee

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