金属フィラメントの販売と脱脂・焼結サービスの提供を開始、ただし法人向け:3Dプリンタニュース
APPLE TREEは、FLASHFORGE製3Dプリンタ「Adventurer3X」で使用可能な金属フィラメント「ステンレス316L」の販売と、同フィラメントを使用した造形物の「脱脂・焼結サービス」(有償)の提供を開始した。
APPLE TREEは2020年7月31日、同社が日本総代理店を務めるFLASHFORGE(フラッシュフォージ)のデスクトップ型FDM(熱溶解積層)方式3Dプリンタ「Adventurer3X」で使用可能な金属フィラメント「ステンレス316L」の販売開始を発表した。併せて、同フィラメントを使用した造形物の「脱脂・焼結サービス」(有償)の提供も開始する。
金属フィラメントの提供は法人直販限定
Adventurer3Xは、従来機種「Adventurer3」の“日本限定モデル”として販売開始された3Dプリンタで、金属フィラメントに対応する他、カーボンファイバー製プラットフォーム、0.3mm小径ノズル、排気フィルターなどを標準搭載する。
今回提供開始したステンレス316Lは、Adventurer3Xで使用可能な金属フィラメントで、販売価格は1リール3万3000円(税別、重量1000g)だ。フィラメント径は1.75mmで、カラーはダークグレー。法人直販限定での取り扱いとなる。
気になる脱脂・焼結サービスは
ステンレス316Lで造形した直後のモデルにはバインダーが含まれており、そのままの状態では非常にもろい。金属の造形モデルとするには、出力後のモデルを脱脂、焼結する必要がある。
ステンレス316Lと同時提供の脱脂・焼結サービスを利用するには、出力サイズは50〜100mm角以内、肉厚は5mm以上、サポート材を必要とせず、オーバーハングの少ない安定した形状を推奨するなど、規定の出力条件に準拠しなければならない(詳細は、同社Webサイト参照のこと)。
また、焼結処理を施すことにより、元の出力サイズから12%ほど縮小するため、スライサーソフト「FlashXPrint」上でモデルサイズをあらかじめ拡大しておく必要がある。なお、FlashXPrint上で使用するステンレス316L用の設定パラメーターは、フィラメント購入時に提供される。
脱脂・焼結サービスは、サイズがX/Y/Z軸方向で200mm以内、総重量1000g以内に収まるモデル(範囲内であれば複数モデルでも可能)を対象とし、サービス利用単価は8万5000円(税別+国際送料3000円)。脱脂、焼結処理は海外工場で行われる。サービス依頼前にメール問い合わせにて、焼結可否の確認と見積もり依頼を行う必要がある。サービス利用の対象は、ステンレス316Lの販売と同じく法人のみで、依頼時にはAdventurer3Xのシリアル番号の提示が求められる。
なお、今回は法人向けサービスとしての提供となるが、今後、個人向けにも展開する計画だという。
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