東芝の新型コロナ影響は想定通り、構造改革の進展でNextプラン第2フェーズへ:製造マネジメントニュース
東芝が2020年度第1四半期(4〜6月期)の決算を発表。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により大幅な減収となったものの、営業損益へのマイナス影響は当初見込みと同レベルに抑え込めたとしている。
東芝は2020年8月12日、オンラインで会見を開き、2020年度第1四半期(4〜6月期)の決算を発表した。売上高は前年同期比26%減の5998億円、営業損益は同204億円悪化の126億円の損失、税引前損益は同1261億円改善の36億円の損失、当期純利益は同1289億円改善の113億円の損失となった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により大幅な減収となったものの、営業損益へのマイナス影響は当初見込みと同レベルの493億円に抑え込めたとしている。
同社は2020年6月5日の2019年度決算発表で、2020年度通期業績におけるCOVID-19の営業損益へのマイナス影響を900億円と見通しており、このうち第1四半期で460億円を割り当てていた。結果として第1四半期のマイナス影響は493億円と33億円増加したものの、今後は第2四半期で220億円、下期で187億円を予想し、マイナス影響の合計900億円は据え置いた。これにより、2020年度の通期業績予想も、売上高3兆1800億円、営業利益1100億円、税引前利益1000億円、当期純利益500億円から変更していない。
なお、第1四半期のCOVID-19によるマイナス影響463億円の内訳は、デバイス&ストレージソリューションが252億円、リテール&プリンティングソリューションが108億円、インフラシステムが50億円、ビルが37億円などとなっている。中でもデバイス&ストレージソリューションは、子会社のニューフレアテクノロジーなどによる中国向け半導体製造装置の設置遅れ(約100億円)、COVID-19の感染拡大が大きく影響したフィリピンのHDD工場の稼働率低下(約70億円)などを主な理由と挙げている。今後は、半導体製造装置の設置を進めるとともに、フィリピンHDD工場の稼働率も80%以上を確保することでリカバリーする方針だ。
また、COVID-19による製造拠点の稼働率は、2020年3月末のフル稼働77%から、同年4月末には国内拠点を休業した影響もあり30%に低下した。しかし、5月末は93%、6月末は97%、7月末は96%と順調に回復軌道に乗りつつある。ただし、各国規制の影響で完全な正常化は8月以降になる見通しだ。
さらに、2020年度第1四半期の受注高は、エネルギーシステムソリューションで大型案件が入った前年同期比で31%減となっているものの、2018年度第1四半期よりも高い水準となっており、営業活動の進捗の裏付けとなっている。受注残については、COVID-19による工期延期が幾つか起きている影響もあり増加傾向にあるという。
これらのCOVID-19のマイナス影響を除いた2020年度第1四半期のコア営業損益では、各ソリューションで中期経営計画「東芝Nextプラン」に基づく改革や固定費の削減を進めることで、前年同期の90億円から4倍以上の379億円と大幅な増益を達成している。
一方、2020年度通期のコア営業損益は、東芝Nextプランによる改革で390億円、固定費削減などで194億円のコスト削減により2200億円を達成する見込みだ。「2021年度からの東芝Nextプランの第2フェーズに向けて、2020年度は基礎収益力の向上に注力している。筋肉質な体質に変えて、次の成長につなげていく」(東芝 執行役上席常務の加茂正治氏)としている。
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