複合機オプション品の需要予測にAIを活用、コニカミノルタが考える成功のカギ:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
NECは2020年7月13〜17日、バーチャルイベント「NEC iEXPO Digital 2020」を開催。本稿では、テーマセッションAIの業務適用に向けたポイント〜コニカミノルタが推進する需要予測へのAI活用〜」として登壇した、コニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏の講演内容を紹介する。
ライブテストにより確認されたメリットとデメリット
ライブテスト計画フェーズでは、AI技術の評価(AIは高い精度のある需要予測を作れるか)と業務適用性の確認(AIを使ってコニカミノルタのSCM業務プロセスを回せるか)の2つの検証を実施した。
その結果、AI技術により目標を上回る精度向上が見られた。一方、業務適用性についても条件付きではあるが、需要予測業務プロセスに組み込むことは可能であることが確認された。具体的に見ていくと「メリットとしては人間よりもキメ細やかに需要予測ができることがあった」(神田氏)という。また、本社経営者、欧州経営者、欧州・本社SCM、事業部、生産などステークホルダーの合意形成に力を注いだことで、社長を含む役員が高い認識を示してくれたことから、スタッフのモチベーションが上がり、積極的に取り組みに関与したこともポジティブな要因になった。
一方、課題として挙がったのがデータの前準備の問題だ。欧州からのデータは多大なクレンジング作業が必要となった。また、データ加工作業にはマニュアル作業が多くこれらの負担も大きかった。スタッフの経験不足もあり、これらの新たな動きを効率的にこなすのが難しい状況もあった。これらの課題を解決するため、欧州に対してはデータ品質の向上を協議している他、データ加工の自動化を検討しているという。
神田氏は「登山に例えると、AI適用の現状は2〜3合目の段階である。今後の展開としてはAIを活用した需要予測業務をグローバル(日本、北米、中国、APAC)に広げていく。また、製品も全ての品種(本体、消耗品)に対応していきたい」と目標を語っている。そのために、グローバルにプロセスを標準化し、例えば最終的にグローバルの需要予測業務を1カ所に集約することも検討している。「需要予測をしているスタッフにデータ分析や、AIに入れるデータの種類などを考えてもらい、さらにAIを育てていくようなサイクルを回す」(神田氏)と意欲を示した。
AI導入に必要な3つのポイント
最後に、コニカミノルタSCMが考えるAI導入に必要なポイントとして神田氏は以下の3つを強調した。
- AI導入は目的でなく手段である。導入目的や効果を明確にすることが重要だ
- 中期的な戦略を作り、一歩ずつ進化していく
- ステークホルダーを洗い出し、支持者となってもらうことが必要
神田氏は「AIありきで考えるのではなくAIがベストな解決策になるかを確認する必要がある。それもライブテストの段階では戻れないので着手段階で検討することが重要だ。また、AIにできることは限定されており、それを育てていくという意識が重要だと感じた。そのための人材の育成も必要になる。さらに1社や1部門で行うことは難しいので、社内外で協力を求め、支持者になってもらいながら進めていくということも成功させるためには必要なことだ」と考えを述べた。
なお、現在世界的に流行しているCOVID-19により、市場状況が地域別に急速に変化し、グローバルに需要予測が困難な状況にあるが、コニカミノルタでは他部署と連携し、新たなAI学習データ(市場データ、経済指標)を採用し対応を進めているところだという。また、同時に人の経験やスキルに依存しないオペレーションのデジタル化に向けた新たな取り組みも進めていく。神田氏は「AIなど業務のデジタル化は競争分野ではない。業務効率化に向けたデジタル化は取り組みを共有していくべき領域だ」と情報共有の重要性について訴えた。
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