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複合機オプション品の需要予測にAIを活用、コニカミノルタが考える成功のカギサプライチェーン改革(1/2 ページ)

NECは2020年7月13〜17日、バーチャルイベント「NEC iEXPO Digital 2020」を開催。本稿では、テーマセッションAIの業務適用に向けたポイント〜コニカミノルタが推進する需要予測へのAI活用〜」として登壇した、コニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏の講演内容を紹介する。

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 NECは2020年7月13〜17日、バーチャルイベント「NEC iEXPO Digital 2020」を開催。本稿では、同イベントのテーマセッション「AI(人工知能)の業務適用に向けたポイント〜コニカミノルタが推進する需要予測へのAI活用〜」に登壇した、コニカミノルタ SCM部 部長の神田烈氏の講演内容の中で、グローバルベースで需要予測業務へのAI活用を進めている同社のプロジェクトの進め方や気付きについて紹介する。

サプライチェーンの需要予測にAIを活用

 コニカミノルタは2003年にコニカとミノルタが統合して設立された。従来の主力であった写真フィルムやカメラの事業からは既に撤退しており、現在はMFP(複合機)やプリンタなどを扱うオフィス事業、デジタル印刷のニーズに対応した出力ソリューションを提供するプロフェッショナルプリント事業、超音波やレントゲン、バイオヘルスケアなどの医療のデジタル化を支援するヘルスケア事業、産業用レンズなど光学技術と材料技術を生かした産業用材料・機器事業を展開している。

 これらの事業環境の中でコニカミノルタのサプライチェーン領域については、独立した組織としてSCM部が担っている。SCM部は、消耗品需要予測、需給調整、受発注出荷、物流企画業務に加え、S&OPプロセス推進、SCMシステム管理開発、SCM戦略企画、KPI管理の8つの主力機能を持つ。人員体制としては国内に約50人、香港オフィスに約50人を配置し、作業を共有して業務を進めている。SCMのミッションは「必要なものを必要な時に必要なだけ必要なところへ供給する」である。現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のネガティブな影響を受けている中でも「ロス費用を下げる他、キャッシュフローを改善するなど、被害をできるだけ抑えるような取り組みを実施している」と神田氏は語っている。

 コニカミノルタではこの中で、さらに効率的なSCMを目指し、オフィス事業とプロフェッショナルプリント事業を対象に、AIの需要予測に取り組んでいる。ただ、取り組みの中で重要な点として神田氏が挙げるのが「AIありきでは考えない」「AIは育てていくもの」「業務にAIを導入するに当たり、誰が影響を受けるの?」の3つの点をあらためて考えることだという。AIを使用したからといってすぐに成果が出るわけではない。誰のどの業務にどういう効果が必要で、それを満たす技術の中で最も合理的なものがAIだという「道筋の明確さ」の重要性について訴えた。

「需給調整」から「需要予測」に変更

 コニカミノルタが需要予測にAIを活用する検討を始めたのは2017年度の第2四半期(7〜9月)だという。現在の本番移行の段階(2020年度第2四半期)まで6つのステップを踏んできた。

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コニカミノルタが需要予測にAI活用を進めたステップ(クリックで拡大)出典:コニカミノルタ

 AI導入の目的はSCMの改善であったが、神田氏は「私自身がデジタル技術に詳しくないため、最初は何をしていいか分からなかった。そこで、社内のIT部門や企画部門に援助を求め、ITベンダーを紹介してもらい、それぞれの技術や事例を教えてもらうことで話を進めた」と最初の情報収集フェーズの状況を振り返った。最終的にはパートナーとしてNECに絞り込み、AI導入を進めたという。

 プロジェクトのスコープとしてまず需給調整業務に活用することを仮決定し、続いてAI活用検討フェーズとして具体的に現在の業務について課題事項を明らかにしていった。何が原因でその課題が発生しているのかを検討したうえで、AI活用で改善策が打てるかどうかを見極める検討会を7回実施するなど、丁寧に進めていった。「最初は需給調整だけで大丈夫だと考えていたが、この検討段階で考えが変わり、需要予測から変えていかなければならないという結論になった。プロジェクトのスコープも需給調整から需要予測に切り替えて取り組みを見直した」(神田氏)という。

 そして、スモールスタートでまず成果を出すことを目指し、コニカミノルタにとって最も大きな市場である欧州、そして需要予測の精度が高くなかった複合機のオプションアクセサリーで実際に活用を進めることとした。

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