設計者はどんな視点で設計者CAEを進めていくべきか【ケース2:構造物の熱伝導解析】:実例で学ぶステップアップ設計者CAE(3)(3/3 ページ)
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第3回は「構造物の熱伝導解析」について取り上げる。
解析の振り返り
設計者CAEを始めたばかりの方にとって、今回の解析結果はおおむね満足できるものだったのではないでしょうか。
しかし、今回の定常解析は平衡状態の計算結果を示すものであり、“時間軸は無視”しています。また、ヒータープレートの表面温度を200[℃]と想定し、カートリッジヒーター接触面(非加熱部分を除く)に温度を設定していますが、本来であればヒーターのW数を考慮すべきだと考えられます。
ヒータープレートの初期温度は室温と同じ20[℃]で、温度制御を行いながら温度が上昇していきます。では、スタートから30分後の状態はどうなっているのでしょうか。以下、その評価(非定常熱伝導解析)を行ってみたいと思います。
非定常熱伝導解析の実施
非定常解析を行う上で、ヒーターの熱量は図6のように時間軸で制御することにしました。具体的には、3分後にヒーターが200[W]になる時間カーブを設定し、有効加熱面の端点にサーモスタットを配置。さらに上下限値を設定して、ヒーターのON/OFFコントロールを行うものとします。
解析結果は図7の通りです。
この解析結果では、□120[mm]内の表面平均温度212.45[℃]、最大値212.85[℃]、最小値212.25[℃]となり、温度分布の均一性が見られました。
解析の設定上、ヒーター熱量の時間カーブや、サーモスタットについて、さらに調整を行い、突き詰めていきたいところではありますが、この解析結果から「30分という昇温時間は、問題ない」と判断することとしました。
それよりも、カートリッジヒーターのW数がオーバースペックだったと考えられますが、市販標準品のカートリッジヒーターのみ使用したヒータープレートにおいて、有効加熱エリア□120[mm]の温度分布を満足する上では、「設計の方向性は正しい」と判断できるかと思います。
今回は、熱伝導解析を行うに当たり、曖昧な数値を工学的なアプローチで求めてみました。また、熱伝導を検証する上で、まずは定常で結果を見て、次に非定常で確認するという流れを紹介しました。これらは設計者にとって、決して難易度が高過ぎる内容ではないと思います。ぜひご自身でチャレンジしてみてください。
次回は、熱による影響として生じる「熱膨張」について取り上げます。お楽しみに! (次回に続く)
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