設計者はどんな視点で設計者CAEを進めていくべきか【ケース2:構造物の熱伝導解析】:実例で学ぶステップアップ設計者CAE(3)(2/3 ページ)
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第3回は「構造物の熱伝導解析」について取り上げる。
熱伝導解析の準備
ヒータープレートの設計が完了しましたので、熱伝導解析の準備を進めていきましょう。解析条件は以下の通りです。
- 定常解析
- 時間経過による温度変化がない状態、つまり平衡状態の計算結果を求めることとする
- 温度設定
- ヒータープレートとカートリッジヒーターの隙間は0と仮定し、それぞれ4箇所のヒータープレートのカートリッジ接触面を200[℃]に設定する
- 対流
- ヒータープレートの上表面付近は特に空気の流れはないものとする。また、上表面以外の面は断熱材によって囲まれていることとする
例えば「SOLIDWORKS Simulation」では、対流について設定する際、熱伝達係数の入力を求められます。
ヒータープレート表面は、大気中に“さらされている”状態ですので、ヒータープレート表面温度よりも低い「雰囲気温度」の空気によって熱のやりとりが行われています。もう少し詳しく説明すると、ヒータープレートと空気の温度差によって、空気に浮力が生じ、空気の流れが発生しています。
この熱伝達係数を入力しなければならないのですが、一体どんな値を入力すればよいのでしょうか。
「SOLIDWORKS」のヘルプを確認してみると、参考として、「空気の自然対流状態において、熱伝達係数は5〜25[W/m2 K]」と記載されています。下限値と上限値とでは、その計算結果が異なりそうです。伝熱工学の文献などを調べてみると、自然対流熱伝達率の計算方法を見つけることができるので、それらを参考に熱伝達係数を求めます。
式2を参考に計算した結果、熱伝導率(h)は9.557[W/m2 K]となりましたので、今回はこの数値をシミュレーションに入力することにします。
定常熱伝導解析の実施
ここまでの条件を基に、熱伝導解析を行った結果が図4となります。
□120[mm]内の温度分布として、まず温度の高い箇所はヒーターの有効長さの部分(解析上温度を加えた部分)になっていることが確認できます。一方、ヒーターのない箇所では、定常解析においても2.9[℃]最大値に対して2.9[℃]低いことが分かりました。
そこで、カートリッジのシーズ長の発熱部長さを、当初選定した90[mm]から120[mm]に変更してみます。なお、W数は同じ200[W/本]とします(W密度5.3[W/m2])。この変更を反映した解析結果を図5に示します。
□120[mm]内の温度分布として、外周部の低い温度との差が1.3[℃]と改善されました。よって、これを最終的な設計案とします。
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