AI分析用の生データをエッジで前処理、工場設備の状態基準保全に必要なもの:スマートファクトリー
マクニカは2020年7月2〜10日にかけて、ユーザーイベント「Macnica Networks DAY 2020」をオンラインで開催した。本稿ではCBMにおけるエッジコンピューティングの活用事例を紹介したセッションを抜粋して紹介する。同セッションではCBMでのAI分析に先立って実施する前処理工程の重要性や、それをエッジコンピューティングで実現する「SENSPIDER」を紹介した。
マクニカは2020年7月2日から10日にかけて、ユーザーイベント「Macnica Networks DAY 2020」をオンラインで開催した。その中から本稿では、マクニカ イノベーション戦略事業本部 インダストリアルソリューション事業部 主席の梶井学氏による、予兆検知/異常検知におけるエッジコンピューティングの重要性を解説したセッションを抜粋してお届けする。
CBMによるメンテナンスのオートメーション化に注目が集まる
工場内設備保全の手法は大きく分けて2つ存在する。1つは定期的にメンテナンスを実施するTBM(タイムベースドメンテナンス)、もう1つは工場設備に設置したセンサーで収集したデータをAI(人工知能)などで分析して故障や異常を予知するCBM(コンディションベースドメンテナンス)だ。
特に近年はCBMによってメンテナンス作業をオートメーション化するニーズが高まっている。例えば、設備工具をセンサーを活用して常時モニタリングすれば、その分、工具の摩耗や経年劣化による突発故障を防ぎやすくなるためだ。万が一、こうした工具の損傷を見逃してしまうと、大量の仕損品を生むことにつながりかねない。
また定期的にメンテナンスを行うTBMと比べると、メンテナンス要員を常時確保しておく必要がない上、メンテナンス用のパーツも必要最低限のストックで済む。このためメンテナンスコストの最適化を図りやすいというメリットもある。
梶井氏によると、設備のセンシング手段には振動センサーを用いるケースが多いという。ドリルなどの動的機器に生じた不具合は、機器の振動数変化を観察することで明らかになることが多いからだ。
しかし状態基準保全に活用するために設備の振動数を計測する場合は、非常に高いサンプリングレートで振動データを取得することが求められる。取得した生データは膨大なデータ量となり、そのままではAIで分析処理などを行うためにクラウドに送信することが難しい。また、そもそも生データの状態でAI分析を行っても、異常の有無を判別できないケースも多いという。
AI分析の前処理工程が大事
ここで重要になるのが生データから異常の閾値となり得る特徴量を抽出するという、AI分析の前処理工程だ。例えば、振動センサーの場合は生データに高速フーリエ変換(FFT)を施すと、機器内で生じる軸回転周波数の中で、特に高い値を示すピーク値が確認できる。そのピーク値の周波数範囲の実効値(RMS)を異常の有無を示す特徴量として閾値に用いることで簡単に異常を見つけ出せる。
なお梶井氏は「この場合のRMSは、信号の大きさを単一のスカラー値で表したものにすぎず、信号に変化が生じた場合は特徴量として用いるのにふさわしくないケースがある。RMSだけでなく尖度、歪度、クレストファクタなどの無次元特徴量とも併せて見る、回転数や圧力、流量などのパラメーターも取得するといった工夫も大事だ」と指摘した。
前処理をエッジ上で実行する「SENSPIDER」
こうした前処理工程をエッジコンピューティング上で実現するセンシング端末として梶井氏が紹介したのが、マクニカが販売する「SENSPIDER」だ。
SENSPIDERは最大8チャンネルのセンサーから同じ時系列で48KHzの高速サンプリングを施した生データが取得できる。特徴量計算の実行はもちろん、AI推論モデルやバンドパスフィルター処理後のRMSを計算するPythonコードのデプロイも可能だという。
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