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オン抵抗を40%、スイッチング損失を50%低減したSiC-MOSFETを開発:車載半導体
ロームは、車載パワートレインシステムや産業機器用電源向けに「1200V 第4世代SiC MOSFET」を開発した。短絡耐量時間を短縮せずにオン抵抗を従来品と比較して約40%、スイッチング損失を約50%低減した。
ロームは2020年6月17日、車載パワートレインシステムや産業機器用電源向けに「1200V 第4世代SiC MOSFET」を開発したと発表した。同月よりベアチップでのサンプル提供を開始し、今後はディスクリートパッケージでのサンプル提供も予定する。
パワー半導体の開発では、オン抵抗を低減すると、ショート時に破壊に至るまでの短絡耐量時間も短縮されるというトレードオフ関係が課題になる。SiC-MOSFETの開発ではそれらの両立が求められていた。新たに開発した1200V 第4世代SiC MOSFETは、進化した同社独自のダブルトレンチ構造を採用したことで、短絡耐量時間を短縮せずにオン抵抗を従来品と比較して約40%低減した。
また、MOSFETには、一般的に低オン抵抗化や大電流化に伴って各種寄生容量が増加する傾向があり、SiCの高速スイッチング特性を十分に発揮できないという課題があった。新製品は、ゲートドレイン間容量を大幅に削減し、スイッチング損失を従来品と比較して約50%低減した。
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