3Dマスク誕生秘話、本格的なモノづくり未経験で量産化まで実現できた理由:デジタルモノづくり(4/4 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、深刻なマスク不足の状態が続いた当初、イグアスは突如、3Dプリンタ製マスク(3Dマスク)のSTLデータを無償公開した。本格的なモノづくりを実践したことのない同社がなぜ3Dマスクの開発に踏み切り、最終的に製品化までこぎつけることができたのか。
本格的なモノづくり経験がないのになぜ製品化できたのか?
なぜ、本格的なモノづくり経験の同社がここまで実現できたのか。1つは専門商社として3Dプリンタを販売する立場にあり、造形方式や材料の特性などについて熟知していた点が挙げられる。また、社内スタートアップのような立ち位置でプロジェクトに取り組め、かつ試作を外注することなく、試作品の製作からレビュー実施までのフロー(トライ&エラー)を自社内で短期間でできる、3Dプリンタならではの強みを発揮できた点も大きい。もちろん、データ作成や量産などに長けたパートナー企業の協力も欠かせなかった。
こうして無事に製品化されたイグアス3Dアウターマスクは、現在、同社ECサイト「サプライズバンクドットコム」にて、1セット800円(税別)で購入できる。また、同社はマスク以外にもCOVID-19対策に役立つグッズなども手掛けている。消毒液用タッチレスツール(STLデータ無償公開中)もその1つだ。
最後に
「困っている人たちの力になりたい」という思いが原動力となり、本格的なモノづくり経験のない同社が1つの製品を作り出すことができた。3Dプリンタを日ごろから取り扱っているという強みはあったにせよ、量産品を世に送り出すというのは非常に大きなチャレンジだったことはいうまでもない。
幸いなことに現在、マスクの供給も追い付き以前よりも比較的入手しやすい状況になってきている。しかし、同様の事態(品不足)がまた起きる可能性も十分に考えられる。もしかすると、それはマスクではない他のものかもしれない。今回のイグアスの取り組みは、3Dプリンタや3Dスキャナなどを活用したデジタルモノづくりが成せる技ともいえる。
自分たちに何ができるのか――。今回のイグアスの挑戦が、同じような思いを持つ、あるいはまだ一歩踏み出せていない企業や個人の背中を押すきっかけになればと願う。
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