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3Dマスク誕生秘話、本格的なモノづくり未経験で量産化まで実現できた理由デジタルモノづくり(3/4 ページ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、深刻なマスク不足の状態が続いた当初、イグアスは突如、3Dプリンタ製マスク(3Dマスク)のSTLデータを無償公開した。本格的なモノづくりを実践したことのない同社がなぜ3Dマスクの開発に踏み切り、最終的に製品化までこぎつけることができたのか。

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多く寄せられた製品化を望む声、量産に向けた動き

 こうして企画が立ち上がってからわずか1週間で3Dマスクのデータを完成させ、2020年3月下旬に同社Webサイト内でSTLデータを無償公開するに至った。その反響の大きさは冒頭で紹介した通りだが、問い合わせの中に「イグアスでぜひ製品化して販売してほしい」との声が多く寄せられるようになり、量産化の検討、イグアス3Dアウターマスクの製品化プロジェクトがスタートする。

 そのトライアルとして、まず社員約300人分の3Dマスクを3Dプリンタ(粉末焼結タイプ/ナイロン素材)で製造、配布した。この取り組みから、ランニングコストだけを見ると1枚数百円程度で造形可能だが、造形エリアをフルに活用しても一度ではそれほど多く量産できないことが分かり、金型での量産に踏み切ることにした。

 金型を用いた射出成形による量産化では、同じ川崎市に拠点を置く二幸技研に協力を要請した。アウターマスクの意匠面については、当初、シボ加工なしで検討していたが、ツヤ感が気になったため、シボ加工ありで量産化することにした。

金型を用いた量産は二幸技研に依頼した
金型を用いた量産は二幸技研に依頼した ※出典:イグアス [クリックで拡大]

 また、製品として販売するに当たり、アウターマスクと説明書だけではすぐに使用できないため、ゴムひもと、インナーの不織布もセットにしたいと考え、調達先を同社自ら選定。さらに、パッケージに関しては、食品パッケージを得意とするヨネヤマ(川崎市)に力を借りた。

付属品の調達とパッケージ。パッケージはヨネヤマに力を借りた
付属品の調達とパッケージ。パッケージはヨネヤマに力を借りた ※出典:イグアス [クリックで拡大]

 そして、製品化の準備と並行し、イグアス3Dアウターマスクを用いた飛沫試験も実施した。新日本空調の協力の下、微粒子可視化システムを用いたくしゃみの飛沫試験を行い、イグアス3Dアウターマスクを装着することで、飛沫を十分に抑制できることが確認できたという。

新日本空調の協力の下、実施した飛沫試験の様子
新日本空調の協力の下、実施した飛沫試験の様子 ※出典:イグアス [クリックで拡大]

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