「ECの世界をリアルで再現する」トライアルが関東初のスマートストアを開店:スマートリテール(2/2 ページ)
トライアルカンパニーは2020年7月3日、同社の既存店舗である「スーパーセンタートライアル長沼店」(千葉県千葉市)にAIカメラなどの設備を導入を通じてスマートストア化しリニューアルオープンした。AIカメラやセルフレジ機能を搭載したショッピングカートで来店客の購買体験の向上を目指す。
ビーコンによるレシピ表示機能を搭載したスマートショッピングカート
スマートショッピングカートにはタッチパネル式モニターとバーコード読み取り機が搭載されており、来店客は棚から手にした商品をカート上で会計することが可能だ。現在、トライアル長沼店では180台のスマートショッピングカートが運用されている。
トライアルの店舗を初めて利用する場合は、まず入店時にトライアル専用のプリペイドカード発行手続きを行う。発行後に入金(チャージ)を行い、カード裏面のバーコードをカートの読み取り部分にかざし、カード裏面に記載されたPINコードを入力する。するとカードの残額情報などがカートに認識されて、商品のバーコードを読み取って購入予定の商品を登録できる。最終的に専用出口(クイックゲート)から退店した際に、カートに登録された購入予定商品の合計金額がプリペイドカードから自動的に清算される仕組みだ。
こうした仕組みにより、来店客は有人レジに並ぶことなく、スムーズに買い物を済ませられる。導入効果の例証として、スマートショッピングカートを導入したトライアルの他店舗では客の来店頻度が14%向上したという。
またスマートショッピングカートは、店内上部に配置された専用ビーコンから位置情報を受信して、来店客が店内のどこにいるかを把握できる。さらに、この現在位置情報を基に、商品購入を促す機能も実装する。例えば、特定の食料品が置かれた商品棚に来店客が近づいた際、オススメの料理レシピがモニター上に表示される。
スマートレジカートの開発を手掛けるのはトライアルなどが出資して2019年に設立したRetail SHIFTだ。同社 取締役の増岡学氏は「スマートショッピングカートの開発を通じて目指したのは『ECの世界をリアルで再現する』というコンセプトの実現だ」と語る。それを象徴する機能の1つが、購入商品にマッチするクーポンをモニター上に表示する機能だ。「例えば、唐揚げの購入客にはハイボールのクーポンをサジェストする、といった具合だ。こうした一連の取り組みによって購買体験の質向上を狙っている」(増岡氏)。
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