医療現場を救え! Maker製フェイスシールドによる支援の輪はどのように広がったのか:ポスト・メイカームーブメント(5)(2/4 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、医療現場では深刻な物資不足が発生。こうした事態に対し、飛沫感染を防ぐフェイスシールドを製造し、無償で医療機関に届ける活動が日本各地で展開されている。必要とする人と、作る人をつなぐ技術と個々の思いを取材した。
日本国内の製造業に伝搬した「DOYO Model」
個人と企業による支援の例をもう1つ紹介したい。
ミマキエンジニアリングや富士工業、武藤工業などの国内企業がフェイスシールドを自社で製造し、無料で医療機関に寄付している。
3社に共通しているのはフェイスシールドのフレームに、「DOYO Model(道用モデル)」と呼ばれるデータを採用していることだ。このデータを開発したのは神奈川大学 経営学部 准教授の道用大介氏。道用氏は大学内にメイカースペース(ファブラボ平塚)を立ち上げ、学生らがデジタルファブリケーションを学ぶ場を運営している。
道用氏がデータをソースコード共有サービス「GitHub」に公開したのは3月下旬。医療物資が枯渇しているという報道を見て、「防護服やマスク、フェイスシールドなどが医療機関に届かないことを危惧(ぐ)した」という。
程なくして、実際にデータを使ってフェイスシールドを造形した医療機関からお礼やフィードバックが来るようになったという。
「個人の開業医や小児科、産婦人科、リハビリセンターなど、COVID-19の感染者対応に当たっていない医療機関からの連絡が非常に多かった。普段フェイスシールドを使用していない医療機関はストックがなく、必要なのに手に入らない状況だった」(道用氏)
道用氏はフィードバックを基にデータの改良を進めた。造形に必要な時間を極力短くし、安価な3Dプリンタでも一度になるべく多くのフェイスシールドを造形できるように工夫をこらした。
DOYO Modelは有償での販売も許可していて、企業がデータをカスタマイズして製造/販売する事例も生まれている。
「市場が飽和するぐらいにフェイスシールドが流通している状況にならないと、必要としている全ての人たちには行き渡らないだろうと思っていた。企業が無償で配布するケースもあったが、無償の取り組みは持続性に欠けるので、金型にしやすいデータを作成し、1社でも多くの企業が量産に取り組んでもらえればと思い、有償での販売も可能とした」(道用氏)
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