医療現場を救え! Maker製フェイスシールドによる支援の輪はどのように広がったのか:ポスト・メイカームーブメント(5)(1/4 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、医療現場では深刻な物資不足が発生。こうした事態に対し、飛沫感染を防ぐフェイスシールドを製造し、無償で医療機関に届ける活動が日本各地で展開されている。必要とする人と、作る人をつなぐ技術と個々の思いを取材した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大を受け、対応する医療現場では深刻な物資不足が発生した。マスクや消毒液、ガウンなどが調達できず、使い捨てのものを消毒して何日も使い回したという話題もメディアを通じて連日報道された。
この状況に異業種も含めた大企業が製造に乗り出す。しかし、それら大量生産されたものが医療従事者の手元に届くまでには時間を要する。そこで「今すぐ必要だ」という声に応えるために、多くの人が同時多発的に行動を起こした。
その1つとして、飛沫感染を防ぐフェイスシールドを製造し、無償で医療機関に届ける活動が日本各地で展開されている。必要とする人と、作る人をつなぐ技術と個々の思いを取材した。
量産の欠点を補ったのは「3Dプリンタ」
「最前線で戦う医療従事者の命を守るためには、マスクだけではなくフェイスシールドが必要だ」として、医療従事者に無償配布するフェイスシールド10万個分の量産費用の寄付を募るクラウドファンディングが2020年4月20日にスタートした。
実行したのは、大阪大学大学院 医学系研究科 特任教授の中島清一氏を中心とした産学官連携機関「プロジェクトENGINE」だ。開始から数日で当初の目標金額である500万円をクリア、記事執筆時点では3500万円を超える寄付が全国から集った。
このプロジェクトはクラウドファンディングによる金型での量産と並行して、Facebook上にオンラインコミュニティーを運営している。そこでは、3Dプリンタを前提としたフェイスシールド用フレーム(通称:阪大フェイスシールド)の無料公開と医療従事者からのリクエスト受け付け、3Dプリントする有志の情報共有が行われている。
金型による量産品が出来上がるまでには、早くても数週間から1カ月程度の時間がかかる。その間に発生するニーズに応えるため、プロジェクトENGINEはフェイスシールドに使用するフレームのデータを同年4月3日に公開した。このデータで造形したフェイスシールドをいち早く、1人でも多くの医療従事者に届ける方法がないか、中島氏から相談を受けたのが、このプロジェクトのFacebookページを運営するデジタルアルティザン 代表の原雄司氏だ。
東京に拠点を置くデジタルアルティザンは3Dプリンタの開発や、3Dデータ活用の研究開発を行うベンチャー企業だ。大阪大学で原氏が講演した経緯から中島氏と面識があったことや、共通の知人がプロジェクトENGINEに携わっていたことから連絡を受けたという。
そこでFacebookでコミュニティー用のページをすぐに立ち上げ、配布のためのガイドライン作成やコミュニティー参加者からの問い合わせ対応のサポートを開始した。
「阪大内のWebサイトでデータを公開したところサーバがダウンするほどアクセスが集中したと伺い、そこまで反響があるのであればSNS上でデータを公開して、効率的に拡散させながら、量産に向けたデータの改善や知見が集まるようにしてはどうかと提案した」(デジタルアルティザン 原氏)
オンラインコミュニティーには1000人を超えるFacebookユーザーが参加している。これまでに約3000個以上のフェイスシールドが有志によって無償で医療機関に届けられた。
また、中島氏らが当初から進めていたクラウドファンディングによるフェイスシールドの量産プロジェクトも順調に進み、これまでに10万個のフェイスシールドが100超の医療機関に届けられた。
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