量子コンピューティングでクルマの待ち時間20%低減、トポロジー最適化への活用も:製造ITニュース(2/2 ページ)
日本マイクロソフトは2020年6月19日、量子コンピューティングへの取り組み状況についてオンラインでメディア向けの説明会を開催。日本における「Microsoft Quantum Network」のメンバーであるJijおよび豊田通商と協力して取り組むプロジェクトの成果などを紹介した。
信号機による待ち時間を20%低減
Jijと豊田通商では具体的に「Azure QIO」を使ってより最適な答えが導き出せないかを検討した。最適化にシミュレーションが不要になり計算時間を短縮できる他、従来方式よりもよい可能性のある解を導き出せるとする。また、他の量子着想最適化方式のアニーリング技術に対し「Azure QIO」は高次数の最適化が可能である点などから、その点でも数式を簡略化でき、より早く計算を行えるようになるという。
検証の結果、従来型の最適化方式と比較して、クルマの待ち時間を20%低減する結果が得られたとする。さらに制御する信号機の個数が増えるにつれて、既存手法より良い結果が得られるという検証結果も出たという。山城氏は「従来型と異なりシミュレーションレスでどれだけ良い結果が得られるのかを重視して取り組んだのがポイントだ。実際に成果が得られそうである点が証明できた。今回は実世界での実証ではなく、仮想空間上での試算結果だが、今後は実世界での実証などを進められるように、議論を進めていく」と語っている。
トポロジー最適化への量子アニーリングの活用も検討
今後はさらに、大規模な交通ネットワークの改良に貢献できるような取り組みを進めていく他、交通ネットワーク以外でも最適化問題の解決が求められる領域に引き続き取り組む方針を示す。具体的には、MaaS(Mobility as a Services)の配車最適化や、都市や国家クラスの大規模な物流最適化などに取り組むという。また、全く別の領域では、トポロジー最適化における材料と構造強度や応力の関係性なども組み合わせ最適化で解くことを検討中だとしている。
「量子アニーリングを使うことで、より安価で軽量化された構造を作ることができる。トポロジー最適化は長年検討されているが、計算が重たいなどの問題で利用が制限されてきた面がある。これを新たなアルゴリズムで塗り替えることで解決に近づけていくという発想だ」と山城氏は述べている。
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