圧縮性の流体を解析してみる:初心者のための流体解析入門(13)(3/3 ページ)
流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は話題を変えて「圧縮性の流体」について取り上げる。
解析結果を確認してみよう
ということで、解析をやってみました。今回用いたモデルは、押しつぶされた細長いひし形のような断面のモデルです。
大きさとしては、横幅が4m程度のモデルで、先端の角度は約20度です。なお、今回は解析時間の関係で周囲の解析空間は比較的小さ目にとっています。この空間にプラスのZ方向から、秒速660m(約マッハ1.9)で空気が流れてくることを想定しました。
今回見てみたいのは「流れ」と「圧力」ですが、圧縮性流体の計算では、「熱」も解く必要があります。解析は定常解析で行っています。なお、今回は研究目的ではなく、あくまでも「やってみた」のノリなので、精度や正確さを追い掛けてはいませんのでご了承ください。
結果は以下の通りです。実験値などがあるわけではないので、あくまでも傾向を見る、といった感じです。類似の論文で発表されている結果とほぼ同様の傾向が見られるため妥当な傾向といえそうです。
超音速のような厳しい条件で、実験を行うことは容易ではありません。しかし、既に実験とCFDを比較し、“十分に良い一致”が見られる結果も論文などで発表されていますので、実験が難しい場合、あるいはできたとしてもコストがかかる場合などは、CFDによるバーチャル実験(シミュレーション)でも十分に意味があるといえそうです。 (次回に続く)
Profile
水野 操(みずの みさお)
1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 設計者はどんな視点で設計者CAEを進めていくべきか【ケース1:構造物の強度解析】
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第1回は「構造物の強度解析」について取り上げる。 - かつてCAEを軽く見ていた設計者がその必要性について説く
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第1回は、CAEの基礎として、その役割やメリットを紹介するとともに、設計者CAEを実践することで得られる効果について取り上げる。 - 経験則に頼らない根拠ある設計を提案できる「設計者CAE」の活用メリット
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第2回は、なぜバリバリの2次元信者だった筆者が“CAEの必要性”を痛感したのか? その決め手となった当時の心境の変化、意識の変遷について掘り下げる。 - CAE普及のためには設計と現場の“両輪”で3D推進を急ぐべし!
かつて2次元大好き信者だった筆者が“CAEの重要性”に気が付いた経緯を踏まえつつ、話題の「設計者CAE」の基本的な考え方について解説する連載。第3回は、設計も現場も1つになって、「総知総力」を挙げたモノづくりを実現するためのヒントを提示する。 - 設計者CAEお悩み相談室
「CAEの社内マニュアルは、本当に必要ですか?」――そう尋ねられたら、あなたはどう答える? ぶっちゃけ現場トーク、2回目。 - 設計者CAEも、そろそろレベルアップしなくちゃ!
設計者向けの解析ソフトウェア(CAE)について、関係者たちが一堂に会してとことん討論します。さてあなたの使っているソフトウェアのベンダさんは、出てくるでしょうか。