自由表面によって気体と液体の界面を捉える:初心者のための流体解析入門(14)(1/2 ページ)
流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は気体と液体、性質の異なる2つの流体を同じ解析空間内で扱うことをテーマに、「自由表面」について取り上げる。
本連載の中でこれまで扱ってきた流体は、パイプの中を流れる「水」や、翼周辺の「空気」の流れなど、液体か気体かは別として、全て1種類の流体のみでした。
実際に多くの問題は、「気体と構造物」、あるいは「液体と構造物」というように、1種類の流体を扱えばよいという場合がほとんどかと思います。しかし、ものによっては、空気と水という2つの性質の異なる流体を扱わなければならないケースもあります。
代表的なものとして、船や橋脚などが挙げられます。例えば、常時、水に接している橋脚の場合は、河川の水量が大幅に増加した際、流れる水から非常に大きな圧力を受けます。あるいは、建物などの対津波性能を、流体解析(CFD)を使って考える場合も該当するかと思います。いずれにせよ、同じ解析空間内で、性質の異なる2つの流体を扱わなければならない場合もあり得るということです。
自由表面の取り扱い
ということで、今回は「自由表面」について考えてみたいと思います。
一般的に、空気と水のように気体と液体の界面のことを自由表面と呼びます。気体と液体の密度比はおよそ1000あり、水に対して相対的に空気の慣性は無視することができ、水は空気に対して自由に動くことが可能です(そのことは、私たちの日常を観察していれば分かります)。実際、川や海の水面を見てみると、天気が大荒れの暴風雨などの状況下では、水は自由闊達に動きます。つまり、CFDでこのような解析をする場合も、「自由な動きを捉える必要がある」ということです。
ところが、これまで取り上げてきた非圧縮性流体単体の機能では、この自由表面というものを捉えることができません。そこで、何らかの自由表面のモデル化の手法が必要となるわけです。自由表面を捉えるための理論は、昔からさまざまなものが考案されており、例えば「ラグランジュ格子法」や「表面高さ法」などがあります。その中でも、現在、多くの流体解析ソフトで採用されている理論の1つが「VOF法」です。
VOF法
VOF法の“VOF”とは「Volume of Fluid」の略です。直訳すると「流体の体積」ということになりますが、これは解析領域に存在するそれぞれの要素、あるいは計算格子に占める流体の体積率(占有率)の値を定義し、その関数としての方程式を解くことで気体と液体の界面を求めます。
占有率は「F値」などともいわれますが、このFの値は0〜1の間で定義されます。例えば、F値が0であれば、その要素は空気のみで満たされていることになりますし、F値が1であれば水のみで満たされていることになります。界面付近に存在する要素では、水が占める割合によって、0.4や0.7といった具合に、0でも1でもないところが2つの流体の界面ということになります。
F=0 | 空気(流体1) | |
0<F<1 | 界面 | |
F=1 | 水(流体2) | |
表1 F値と流体の関係 |
このF値は「液相率」とも呼ばれますが、各要素における液相率と密度の関係は以下のような式で表現できます(式1)。
ここで、ρは要素全体の密度、ρ1は気相の密度(例えば、空気の密度)、ρ2は液相の密度(例えば、水の密度)、Fが液相率になります。VOFにおいては、自由表面の時間発展は、液相率の移流方程式により以下のように示すことができます(式2)。
この移流方程式の扱い方として、「界面捕獲法」などが使用されています。
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