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始まりはCEATECの出会いから、LIXILのIoTサービスは親子の絆を再び強めるイノベーションのレシピ(2/2 ページ)

LIXILグループ傘下のNITTO CERAは、遠隔地に住む親のトイレ使用状況を可視化するIoTサービス「omu」を開発し、クラウドファンディングを開始した。omuの開発はどのように進められたのか。開発を担当したLIXIL WATER TECHNOLOGY JAPANの浅野靖司氏と稲田ゆか理氏に聞いた。

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「CEATEC JAPAN 2017」でノバルスと出会う

 LIXILは、水まわりに用いるさまざまな電子機器を開発しており、omuのIoT機器のように電子機器に水がかかることにも慣れ親しんでいる。ただし開発の課題になったのは、トイレの水タンクに置くだけで、設備工事を不要にするための給電と通信技術である。この課題を解決する共同開発パートナーとなったのが乾電池型IoTデバイス「MaBeee」を手掛けるノバルスである。

「omu」のIoT機器には、ノバルスの乾電池型IoTデバイス「MaBeee」が組み込まれている
「omu」のIoT機器には、ノバルスの乾電池型IoTデバイス「MaBeee」が組み込まれている(クリックで拡大)

 LIXILとノバルスの出会いのきっかけは2017年10月開催の「CEATEC JAPAN 2017」だった。LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN 理事 新規事業推進部 部長でNITTO CERA 社長の浅野靖司氏は「LIXILが新たな事業展開を模索するため2017年に初出展した際に、B2B向けの事業展開を強化するべく出展していたノバルスと出会い、開発の取り組みが始まった」と述べる。

 両社の出会いから約半年後の2018年春には、見守り系サービスの可能性を模索するためのプロトタイプとして、電池で動くトイレ用リモコンを開発し、半年間のモニター調査を進めた。「このとき大きな課題になったのが、“見られている”ということに対する抵抗感だった。この課題解決を含めて、モニター調査からあるべき姿が見えてきた」(浅野氏)という。

 2018年秋からは、トイレ用リモコンとは異なる次のモデルの開発を開始し、2019年秋には現在のomuにつながるコンセプトモデルが完成。2019年10月の「CEATEC 2019」に「みまもりトイレサービス」として参考出展した。浅野氏は「ここで大きな手応えが得られたので、2019年12月からomuのプロジェクトを正式スタートさせた」と語る。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大などで作業スケジュールが厳しくなるものの、プロジェクト発足から約半年でクラウドファンディングのスタートまでこぎつけたことになる。

利用料は月額980円に抑える

 先述のモニター調査などを経て決まったのが利用料金だ。稲田氏は「離れた親のことを思い出す、親との絆を強めるというのがomuのコンセプトだが、そのためには利用料はリーズナブルでなければならない。そのために月額980円(税別)というラインを超えないように開発を進めてきた」と強調する。また、使用する電池は単四形アルカリマンガン型乾電池2本だが、ノバルスのMaBeeeの技術により約1年間の継続利用が可能だ。なお、IoT機器本体の価格は約1万円を想定している。

 IoT機器を、トイレの水タンク上部の手洗いに設置する仕様としたのも、親世代の家の半数以上でトイレに手洗い付き水タンクが設置されているという調査結果に基づいている。「“見られている”と感じないように、トイレの水タンクに溶け込むような、自己主張のないデザインにした」(稲田氏)という。

「omu」は見守りサービスを利用する上でのさまざまなハードルが低いことが特徴になっている
「omu」は見守りサービスを利用する上でのさまざまなハードルが低いことが特徴になっている 出典:LIXIL

 ただし、トイレの水タンク上部という設置位置はトイレ洗浄剤などと競合する可能性もある。浅野氏は「近年のトイレの水タンクは内部構造が樹脂製になっており、水タンク上部にトイレ洗浄剤を置くことは推奨されていない。この流れもあって、スタンプタイプのトイレ洗浄剤も普及しつつあるので競合しないのではないか。また、洗浄剤メーカーとコラボしたomuを開発するということも考えられる。今回のクラウドファンディングを通して、他業界とのコラボレーションも模索したい」と述べている。

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