成長への“フェーズ2”に入る東芝、インフラサービス企業への転換を加速:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
東芝は2020年6月5日、2020年3月期(2019年度)の決算と東芝Nextプランの進捗方向のオンライン説明会を開催し、「インフラサービス企業」への転換を本格化する方針を示した。
成長へのフェーズ2に向けたセグメント変更
フェーズ1で着実な成果を残す中、新たに力を入れるのが成長に向けたフェーズ2への取り組みである。東芝では、これらの取り組みを本格化させるために2021年度から新たな事業セグメントを採用する。従来は、エネルギーシステムソリューションやビルソリューション、リテール&プリンティングソリューションなど、分野別の事業セグメントとしてきたが、新たに機能別の事業セグメントに組み替える。具体的には「デバイス・プロダクト」「インフラシステム(構築)」「インフラサービス」「データサービス」の4つの機能別セグメントを用意する。
「デバイス・プロダクト」は技術で差別化するハードやソフトを中心とした従来型の製造業としての領域で、この領域では特徴ある技術や製品で確実な収益確保を目指す。「インフラシステム(構築)」は東芝の従来の強みである各種インフラの初期構築で、オペレーション改善で収益力の向上を目指す。そして当面の主力と位置付けるのが「インフラサービス」である。
「インフラサービス」は、長期にわたる保守・更新・運用受託などを担うもので、デジタル化やデータ活用でさらに進化させることができる領域だ。東芝では「CPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業になる」と宣言しているが、このCPSを活用することで最も付加価値を生み出せる領域であるからだ。車谷氏は「東芝はインフラサービスカンパニーを目指す。CPSがインフラサービスカンパニーのステップになる」と語っている。
また「データサービス」はデータ活用による新付加価値創造を行う事業で、現在はまだそれほど売上高などがない領域だ。しかし「3〜5年後の中核にしていく。O&M(運用、保守)サービスや人々の活動をベースにした新たな価値を創出する」と車谷氏は述べている。これらの4つの事業を相互連携させていくことでシナジー効果を生み出し、競争力を高めていく。
インフラサービスカンパニーへの転換
新事業セグメントの売上高や営業利益率の精査は「現在進めているところだ」(車谷氏)としているが、現在はサブビジネスユニット単位での割り振りで、参考指標として2019年度の各セグメントの収益情報を公開した。これによると、「インフラサービス」は売上高1.3兆円、ROS(売上高経常利益率)10%、EBITDA1450億円と東芝の収益の柱であるということが分かる。
今後、東芝ではこのインフラサービスを軸に事業を組み立てていく方針だ。インフラサービス事業では、通常の成長に加えて、戦略的M&Aを実施し東芝グループのサービスネットワークを活用することで、サービスロケーションを拡大する。新規のインフラシステム構築などに加え、インフラサービスの単独受注なども視野に入れる。
車谷氏は「インフラサービスは競合企業もそれほど多くなく、参入障壁は高い。より多くの市場を獲得して利益率を上げるという考え方だ。このインフラサービスを支えるのが、差別化製品を生み出すデバイス・プロダクトとサービスロケーション拡大につながるインフラシステム構築である。ただ、これらの事業は利益率がそれほど見込めないため、何でもやるというわけにはいかない。収益性の見込める領域を選択して取り組むという方向性だ。データサービスについては将来的に大きな成長が見込める領域だと考えている。従来の製品軸の事業体である総合電機モデルから脱却しインフラサービスカンパニーとしての企業価値を最大化する。新セグメントで大きな価値を作りたい」と方向性を述べている。
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