ロボットや医療機器向けで用途が広がる電子回路基板、製造開発受託が拡大:組み込み開発 インタビュー(2/2 ページ)
製品がITやネットワークなどを前提にしたモノへと生まれ変わろうとする中で、重要性を増しているのが電子回路基板である。電子回路基板の開発や製造受託で成長する長野OKIの取り組みについて、代表取締役社長に就任した薄井薫氏に話を聞いた。
営業力や生産力を強化
営業面では、2020年度に新たに新規開拓の専門部署を設立した。現在は本社のある長野の他、東京と大阪に営業所を構えているが、それ以外の地域の企業に対して営業活動を強化していく。また、OKI EMSグループの総合力を生かし、販路拡大を進めていく方針である。
生産力については、0603部品や0402部品に対応した高密度微細実装が行える生産設備に加え、変種変量生産体制を整備することで、小ロット製品の効率的な生産に対応している。「機種の切り替えは1日に約50回、基板の種類は月で800種類、実装部品は2万5000種類という状況で、24時間稼働を行っている。1ロット100個くらいの製品が一番得意とするところだが、実際には生産数量が5個というものもある。これらにきめ細かく対応できる点が特徴だ」と薄井氏は述べている。
また、品質を保証する解析技術や検査設備などもそろえている。3次元自動外観検査装置や自動X線検査装置を活用し、X線CT解析の他、無機・有機物成分分析、各種信頼性試験などを行っている。
ロボットや簡易検査装置でさらに生産性強化
今後はさらに省人化や生産性向上に向けた取り組みを推進する方針で、ロボットの導入に着手しているという。「今までは無駄取りなどで効率化を進めてきたが、今後を見据えた時には人手不足は深刻な課題となる。工場が全て無人化するとは思わないが、人の力でなくてもできるところは機械化や自動化を進めていく必要がある」と薄井氏は考えを述べる。
現在は、基板にSMTなどでは対応できない大型の部品を搭載する工程にロボットを導入し始めたところだという。「現状では前準備だけだが、将来的にはロボットが部品を搭載するところまで全て自動で行えるようにしたい」と薄井氏は語る。
また、3次元外観検査装置のように高度なものではなく、部品のあるなしを判定する簡易な画像検査装置の導入を広げている。「外観検査装置のような複雑な判定はできないが、工程間でミス防止のような作業支援の意味では、簡易画像検査は役に立つ。従来は検査できていなかった間の工程で簡易にチェックできるようになることで品質や歩留まりを高めることができる」と薄井氏は効果について述べている。
これらの商品開発力、営業力、生産能力の強化を進めることで、電子基板のEMSパートナーとしての信頼性をさらに高め、売上高5%成長を続ける方針だ。薄井氏は「現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で物流の問題などが出ているが、半導体関連や産業系など中期で見た場合は需要そのものは堅調な領域がある。こうした領域で着実に成長を続けていく。さらに、製品開発の上流から参加し、製品開発のパートナーとしての存在感を高めていく」と薄井氏は今後の抱負について語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「EtherCAT P」の評価ボード登場、スレーブ開発を支援
長野沖電気は「ネプコンジャパン2017」において、産業用オープンネットワーク「EtherCAT」の新規格である「EtherCAT P」の評価ボードを出展した。 - 進撃の国産EMS、沖電気が描く日本型モノづくりの逆襲
国内工場が逆境に立つ中で“製造現場の強さ”そのものを武器とし、国産EMSとして業績を伸ばしているのが、沖電気工業 EMS事業本部だ。最後発の国産EMSとして成功した秘密はどこにあるのか。また日本型モノづくりの勝ち残る道はどこにあるのか。沖電気工業 常務執行役員 EMS事業本部長の清水光一郎氏に話を聞いた。 - iPhoneを製造するフォックスコンは、生産技術力をどこで身に付けたのか?
エレクトロニクス製造・実装技術展「インターネプコン ジャパン」の特別講演としてフォックスコンの技術顧問で、ファインテック代表取締役社長の中川威雄氏が登壇。「世界No.1 EMS “Foxconn”のビジネス戦略」をテーマに同社の強さの秘密と今後の課題について語った。 - 第4次産業革命で変わる検査と品質向上の取り組み
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第21回となる今回は、IoTやAIを活用することで品質向上への取り組みがどのように変化するのかという点を紹介します。 - 品質不正問題にどう立ち向かうのか、抜本的解決のカギはIoTと検査自動化
2017年の製造業を取り巻く動きの中で、最もネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題だろう。「日本のモノづくり」のブランド力を著しく傷つけたとされるが、2018年はこの問題にどう対応するのかという点は、全ての製造業の命題である。人手不足が加速する中、解決につながる「仕組み」や「ツール」に注目が集まる1年となる。 - IoT時代にどう立ち向かうか、自動検査の位置付けを変えたマインドセット
「検査装置は不具合を見つける装置ではなく、不具合を出さないためのものだ」――。基板実装ラインなどで使われる外観検査装置で好調を続けるサキコーポーレーションだが、成功の土台には「マインドセット」の取り方にあったという。サキコーポレーション社長の秋山咲恵氏の講演の内容をお届けする。